HOME > 日々雑感:よくわからないこと?! > 金融・経済 > スイス・フランのユーロ連動と投機資金~ジョージ・ソロスにみるヘッジ・ファンド資金の変容
スイス国立銀行は、スイス・フランの上昇を抑えるために、1ユーロ=1.2スイス・フランを上限として、ユーロに連動させることを発表した。この上限に抑えるために、必要があれば、無制限にスイス・フランを売って介入を行うものだ。もし、これがうまくゆかなければ、巨額の損失を被る可能性がある政策だ。実際、スイスは昨年前半にもスイス・フラン売り/ユーロ買いの介入を実施して、それがうまくゆかずに260億スイス・フラン(約2兆4000億円)の損失を出している。
また、同様に為替介入がうまくゆかなかった例としては、1992年に、ジョージ・ソロスが英ポンドを売り浴びせ、英国は介入でポンドを買い向かったが、失敗して、当時(ユーロ導入前)行われていたERMから、英国が離脱するということも起こっている。日本においても、円高を阻止するために円売り/ドル買い介入を行って生きているが、現在、それを行う外為特会では40兆円という1年の税収とほぼ同じだけの評価損益を抱えるという厳しい状況となっている。
スイス・フランの行方はしっかりと見守っていきたい。
そこで、注目されるのは、ヘッジ・ファンドなどの巨額資金の動向だ。先に触れたように、過去には、ジョージ・ソロスのように、英国やタイなどの中央銀行を打ち負かして、巨額の利益を上げた例もある。しかし、最近は、ヘッジ・ファンドなどの資金の動向が以前のように大きく注目されるような動きをしていない。リーマン・ショック以降ヘッジ・ファンドの残高は一時的に減少したが、最近はまた以前の水準を上回るような状況に戻ってきているというのにだ・・・
この理由としては、いくつか考えられる。例えば、ジョージ・ソロスが外部資金を返却してしまった理由と言われるドット・フランク法による規制強化の問題だ。
また、ヘッジ・ファンドなどの資金の投資家の内容が大きく変化したことによる運用の変化だ。ヘッジ・ファンドの投資家は、以前は、個人の富裕層が中心だったが、その後は年金などの機関投資家の資金が大きく流入している。個人の投資家の場合は、収益が上がれば運用内容などにはほとんど口を挟まなかったが、機関投資家の場合は、受託者責任の観点から運用内容の詳細な開示を求める。また、収益のダウンサイドのリスクに敏感な事から、リスクの分散を求める傾向が強い。
そのため、運用手法、運用戦略、投資対象等々の分散が必要になってしまう。かつてジョージ・ソロスが行ったような巨額の資金を集中的に投資するようなことは行われなくなっている。
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