【Crossroad:掲載記事】『銀河の森』(芳野太一)(2010年4月号掲載)/日々雑感:よくわからないこと?!

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【Crossroad:掲載記事】『銀河の森』(芳野太一)(2010年4月号掲載)

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コメント:

紀元前54世紀頃に、ギリシャにおいて、精神と物質を分離する二元論的な考え方が確立し、その後2000年以上にわたって、その科学・文化は西洋世界の根本をなっていった。その後のデカルトの出現で、更にこの考え方は強化された。このような世界観は、科学技術の発展という効用をもたらしたが、文明を損なうという負の部分も残した。しかし、皮肉なことにも、そのような考え方からでてきた現代物理学の発展の結果として、この二元論的な考え方が見直しを迫られている。それは、物質の構成物及びその関連事象はどれも相互に関連しており、依存し合っているというもので、そこではそれらを個々の独立した存在として理解するのではなく、全体の中で理解しなければならないというものです。

『天地も、空も、大気も、編みこまれていく。そして風も、すべての生命の息吹とともに。かれは知っている、かれひとりが魂であることを。』(『ウパニシャッド』)

これは万物の一体性を表しており、芳野作品の中にもこのような万物の一体性を感じる。

今回の作品「銀河の森」が収められている作品集「風の箱」は、静謐で奥行きの深い詩的で幻想的な世界を作り出している。自然と人が織りなす、その瞬間瞬間の景色を、その瞬間だけの景色ではなく、太古からの記憶を包含するものとして、捉えようとしているように思われる。

 

自然を表わすものとして「絶えず形を変え、その動きによってのみその存在を示す流体物」としての「風」を、我々「人間」との関係で描いている。「風」が見せる様々な形を通して、また更に「銀河」という形で空間的な広がりを見せる。また、「種子」や「新芽」で太古からの時間的な関連性を表現し、作品を通して空間、時間、またそれらの相関性に関する考え方を一新させてくれる。

略歴:

1960年 東京に生まれる

1986年 創形美術学校卒業

1989年 日仏現代美術展(優秀賞)

1988年 国画会展(国画賞)・クラコウ国際版画ビエンナーレ・ソウル国際版画ビエンナーレ

1994 TAMAうるおい美術展(大賞)・日仏現代美術展(優秀賞)・現代日本美術展(国立近代美術館賞)

1994シガ・アニュアル94「版の宇宙」

77ギャラリーを中心に全国で個展を開催。現在、日本版画協会準会員・国画会会員。

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