HOME > 日々雑感:よくわからないこと?! > アート > 【Crossroad:掲載記事】『どんでん返しって気持ち良くて好き』(大坂秩加)(2010年6月号掲載)
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彼女の作品では、舞台で上演される芝居を見ているような感じにとらわれる。そこで上演される芝居は、おどろおどろしい複雑な人間関係、特に男女関係、を客観的に、さめた感じで、時に自虐的な感じで観客に見せてくれる。彼女の言葉を借りれば、「一生懸命生きることで生まれる「生活の滑稽さ」」であり、日常生活に潜む「まぬけ」を作品として表現している、ということになるだろうか・・・
作品制作にあたって、特に「舞台」ということは意識していないとのことだが、舞台美術を作りたいと思ったこともあり、また、芝居を見るのが好きで、役者として芝居に出てしまったこともあるようだ。舞台で言葉が飛び交うさまが好きなのだそうだ。
彼女は作品を制作する際に、「言葉」をモチーフにして、日常生活の中で行き交う言葉を拾い集め、それらが発せられた状況とは全く別の物語を作品にしていくのだそうだ。このあたりは、前記の「舞台」ということと無意識のうちに繋がっているのかもしれない。美術の作家というよりも舞台監督や脚本家のように、舞台で芝居を作っていくような感じだ。
上演(掲載)されている作品は「どんでん返しって気持ち良くて好き」という作品で、役者さんは若いカップルとその女性の友人女性だ。若いカップルは「赤い糸で結ばれているようにあやとり」をしているが、よくみると男性の手からは一本の細い「赤い糸」が上に伸びており、その糸は女性の友人女性の手につながっているのが見え、この3人が三角関係であることが分かる。舞台の上には何やら何月と書かれたカレンダーのような札が沢山並んでいるが、これらはこのカップルと三角関係にあるもう1人の女性との間で様々な出来事があったことを示しているようだ。タイトルが「どんでん返しって気持ち良くて好き」ということは、これからまだまだ事件が起こることを暗示しているようだが、これからどのような展開があるのだろうか?このように美術作品を見て感じるというだけでなく、舞台を見たり、本を読んだりするような楽しみも感じさせてくれる作品だ。
略歴:
1984年 東京都生まれ
2003年 東京都立藝術高等学校卒業
2009年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
現在 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程在学中
グループ展:
2007年 「上の十の女」art space古家屋(東京)
2008年 「913」Gallery坂(東京)
「日豪交流展-Victorian college of Arts×東京藝術大学」東京藝術大学学生会館(東京)
2009年 第77回版画版画協会展 東京都美術館
「Summer Group Show Hop Step Jump」Gallery MoMo Roppongi(東京)
「EMERGING DIRECTORS’ ART FAIR ULTRA002」スパイラルガーデン(東京)
第34回全国大学版画展 町田市立国際版画美術館(東京)
個展:
2010年シロタ画廊(東京)
受賞歴:
2008年 セプティーニ・エディション賞
2009年 サロン・ド・プランタン賞/O氏記念賞/第77回版画協会展 立山賞
東京藝術大学俵賞/第34回大学版画展買上賞
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