HOME > 日々雑感:よくわからないこと?! > アート > 【Crossroad:掲載記事】『コアラの刺繍をしていた』(樋口朋巳)(2010年8月号掲載)
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「コアラの刺繍をしていた」というタイトルのこの作品にはコアラが登場しない。しかし、このタイトルを見ただけで作者の世界に引き込まれてしまう。樋口さんの作品は、日常の一コマを切り取ったような作品が多い。これは一コマではあるが、「続いてゆくこと繋がってゆくもの」の一コマで、私たちが「受け入れる事しか出来ない物事」だ。
そのような作者の考えから紡ぎだされてくる作品は、何か温かい空間と時間を運んで来てくれる。日常生活の中で、何かむしゃくしゃしていた気分になっていたものが、彼女の作品を見ると、自然と微笑んでしまうような気分にさせてくれる。
作品の多くは、銅版画独特の繊細な線と淡い色調の画面の中に、様々な「人」や「もの」、それと「動物(らしきもの)」が登場する。それでも全体は非常にシンプルな印象で、シンプルがゆえに、その中から様々な物語やイメージが生まれ、ゆったりとした時間と空間に包まれるような世界が生まれるのかもしれない。
3年くらい前から銅版画だけでなく、油彩も始めたとのこと。彼女の新しい世界の展開を期待したい。
略歴:
1969年 長野生まれ
1993年 多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業
1997年 第5回プリンツ21グランプリ展
ボローニャ国際絵本原画展(イタリア)
1998年 第4回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ スポンサー賞
第1回神戸版画ビエンナーレ 神戸新聞賞
2000年 クラコウ国際版画トリエンナーレ(ポーランド
第5回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ スポンサー賞
2001~2002年 Made in Japan展(イギリス)
・BURISTOL CITY MUSEUM
・BANKSIDE GALLERY
・ALFRED EAST ART GALLERY
2003年 第4回イール・ド・フランス版画ビエンナーレ(フランス)
新世代の女性版画家たち展 ギャラリータマミジアム(名古屋)
2005年 ボローニャへの絵手紙出品 板橋区立美術館(東京)
2006年 第8回日本・ハンガリー現代版画展出品(長野)
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