2011年4月/日々雑感:よくわからないこと?!

2011年4月

【Crossroad誌:掲載記事】『水玉のスカート(大矢加奈子)』(2011年1月号)

大矢 加奈子 (Kanako Ohya

 作品タイトル:『水玉のスカート』

101220_写真_水玉のスカート.jpgのサムネール画像

大矢加奈子は少女、室内、バスルーム、また最近ではゴミ、という日常的な題材をモチーフにして作品を制作することが多い。題材は日常的ではあるが、その題材が日常的であればあるほど、どこか現実からかい離したイメージの世界がそこには展開される。背景が白色で、そこにオレンジと青紫色を主体に描かれることが多く、写真のネガを見ているような印象もあり、それも非現実的な世界をイメージの増幅している理由の1つかもしれない。

私たちの日常は、せわしないスケジュールに追われ、あふれる情報には押しつぶされそうになり、わずらわしい人間関係には惑わされている。しかし、ふと立ち止まって考えてみると、それらが自分自身と本当に繋がっているのかよくわからないし、自分の存在そのものが不安定なものであることにハッとさせられることがある。彼女の描くという行為も、現実と非現実の世界の中にあって自分自身を確認しようとしているのかもしれない。

この作品でも、絶えず変化するものとしての少女が登場し、その少女の世界は朽ちていくスカートのように、変化し流動的なものだ。しかし、朽ちていくといっても、それは花に変わっているようで、何か未来への確信を感じさせ、ほっとさせられる。

 略歴:

1983 神奈川県生まれ
2006
 東京造形大学美術学部美術学科絵画専攻卒業
2008
 東京芸術大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻修了

展覧会履歴:

2010年 「大矢加奈子展」hprpg GALLERY東京(東京)

「室内風景」Gallery Jin Project(東京)

2009年 「大矢加奈子展」hprpg GALLERY東京(東京)

        Empty Room(gradation)HP FRANCE WINDOW GALLERY(東京)

2008年 「Empty RoomGallery Jin Project(東京)

        ART AWARD TOKYO」行幸地下ギャラリー(東京)

受賞歴:

2009  28回損保ジャパン美術財団選抜奨励展秀作

2008年 群馬青年ビエンナーレ大賞

問い合わせ先:

hpgrp GALLERY 東京」
Tel:81-3-3797-1507
 E-mail:art@hpgrp.com

【Crossroad誌:掲載記事】『スカートの裾がぬれてはいけない(樫木知子)』(2010年12月号)

樫木 知子 (Tomoko Kashiki

作品タイトル:『スカートの裾がぬれてはいけない』 

スカートの裾がぬれてはいけない.jpg

最初にこの作品を見たときは、水上にたたずむ女神(例えば観音像)を描いたものかなと思い、タイトルはとみれば、「スカートの裾がぬれてはいけない」であった。よくよく見ると背景はブロック塀で、その切れ間からはなぜか屋内の木製の階段の様なものが見える。水上と見えたものも小路の水たまりかもしれない、とも思える。また、人物の指は奇妙にまがり、水面に映る脚も曲がっているようだ。夢なのか現なのか、外なのか内なのか、現在なのか過去なのか、よくわからない不思議な空間がそこには広がっている。それは、一見、簡素な空間に見えるが、実は奥深い濃密な空間で、作者と絵の中の登場人物、あるいは絵を見るものとの、時間を超越した相対的な空間を作り出している。

作者は「美しい女性を描きたい」という。作者が「見たい行為」「したことのある行為(していて心地よかった、又は不快だった、などの印象深い行為)」あるいは「してみたい行為」といった自身の「願望」を発端として、製作を行うという。製作は、アクリルを塗っては削るという作業を何回も繰り返し、画面を作っていくという。その長い一連の行為の中から、思い描く架空のイメージに近づけるために、不必要なものをそぎ落とし、またそぎ落とし、イメージするものを掘り起こし、作りだしていく。それによって、作者自身の「願望」=「夢・理想」の世界に少しずつ近づいていくのかもしれない。

略歴:

1982年 京都府生まれ

2006   京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業

              その後同大学美術研究科博士課程絵画専攻(油画)在籍

個展:

2006   「萌芽のとき 樫木知子展」ギャラリー16(京都)

2007   「樫木知子展」ギャラリー16(京都)

2008   「樫木知子」MEM(大阪)

2009   「樫木知子」オオタファインアーツ(東京)

賞歴:

2006   京都市立芸術大学修了制作展同窓会賞受賞

2007   アクリル美術大賞入賞

2009   VOCA奨励賞受賞 

【Crossroad誌:掲載記事】『私は私の声を聞く(阿部清子)』(2010年11月号)

阿部 清子 (Kiyoko Abe

 

「私は私の声を聞く」 P8 阿部清子web.jpg

彼女の描く人物の強い眼差しには、思わず射すくめられてしまう。何事にも自信が無い私としては、その人物の視線を通して、私の内面全てを見透かされてしまうような感覚に包まれ、どうも居心地が悪い。

「その人の意思を描きたい」という彼女自身も、自分自身の内面、それから彼女が接する人達との関わりを通して、自己の存在そのものを確認しようとしているようだ。

人物画が中心なのは、多分、そのような自己確認のための行為を行うためなのだろう。

更には、通常の作品を描くことに加えて、老人ホームの慰問も行い、そこのご老人の似顔絵も描いているそうだ。そのような「一期一会」的な出会いも作品に影響を与えているかもしれない。

絵を描く際には、事前にタイトルを決めてから取り掛かるそうだが、描く人物には、それぞれ役割が与えられて、命を吹き込まれていく。また、それは彼女の命でもあるのだ。

以外にも彼女は大変な怖がりなのだという。よく聞いてみると、「わからないことが怖い」のだそうだ。わからないことがあると、きっと、正面から切り込んでいくのにちがいない。怖がりだといっても、ただの怖がりではない。私も少しは見習わないといけない。

 略歴:


1970年 東京生まれ

1996年   第7回臥龍桜日本画大賞展入選(洋協アートホール・銀座)

2005年     「万様種子展」(佐藤美術館・千駄ヶ谷)

2006年     「阿部清子展」(柴田悦子画廊・銀座)

2007年     「阿部清子展-劇場-」(柴田悦子画廊・銀座)

2008年     「阿部清子展-多感のすすめ-」(柴田悦子画廊・銀座)

       「墨のチカラ」(羽黒洞木村東介・湯島)

2009年     「男が描く男 女が描く女」(柴田悦子画廊・銀座)

「河童展」(天神下はぐろ洞・湯島)

        「阿部清子展-結婚-」(柴田悦子画廊・銀座)

2010年   「男の墨 女の墨」(柴田悦子画廊・銀座)

「指派-ゆびのは-」(アートフェア東京・秋華洞)      

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