HOME > 日々雑感:よくわからないこと?! > アート > 【Crossroad誌:掲載記事】『BATHL』及び『BATHR』(坂本夏子)(2作品)(2011年8月号)
日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』8月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、現在夏季ユニバーシアードが開催されている広東省・深圳市にあります。
作品タイトル:
「BATH,L」(左) 2009 oil on canvas 第一生命ギャラリー蔵
「BATH,.R」(右) 2009-2010 oil on canvas 高橋コレクション蔵
坂本 夏子 (Natsuko Sakamoto)
コメント:
何か「MATRIX」の世界にでも迷い込んでしまったかのようだ。左右の作品は鏡のようになっており、また、それぞれの作品の中でも様々な鏡面が存在するかのようだ。しかも、空間全体がゆがんでおり、見ているとそのゆがんだ空間に飲み込まれ、中に落ち込んでしまうそうだ。
左右のどちらが現実なのだろうか?あるいはこの2枚に映る現実がほかに存在するのだろうか?いや、作品に描かれている世界の方が現実なのだろうか?何が実像で、何が虚像なのかわからない世界を前にして、思わず自分自身の存在そのものに対する不安を覚えてしまう。
作家は2作品を鏡合わせにおいて、同時に書き進めたそうだ。「バスルーム」は、水(面)が大きな鏡となり、そこにあるタイルは、ゆがんだ空間設定を行うには最適の設定だ。2作品を鏡合わせのように描いたとは言っても、よく見ると左右で若干違うところもあり、また、立ち位置(視線)がずれているような箇所もある。何か視線がゆがんだ空間に迷い込んで、徘徊するうちに、時間すらもこの空間の中でずれてしまったかのようだ。
それは、まず最初に、一方の画面に虚像を描き、それをもう一方の画面に実像として反映させ、それを繰り返し、描くことで、虚と実は区別することが出来なくなり、また虚と実を区別することは意味がなくなり、それぞれがその存在を主張しだした結果だろう。
長い時間見ていると、絵の中に引き込まれて、出てこれなくなりそうなのだが、「真」の自分の姿を見つけ出し、出口へと導いてくれる「白ウサギ」は現れるのだろうか?
作家略歴:
1983 熊本市に生まれる
2007 愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業
2009 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画・版画領域修了
現在、 愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程在学中
個展
2008 overflow 白土舎/名古屋
2010 "BATH,R" 白土舎/名古屋(3.13-4.17)
主なグループ展
2007 豊田市美術館常設展示, portrait 豊田市美術館/豊田市
2010 絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から 国立国際美術館/大阪
2010 VOCA展2010 上野の森美術館/東京(3.14-3.30)
2010 豊田市美術館常設展示 豊田市美術館/豊田市
受賞
2009 第一回絹谷幸二奨励賞
2009 VOCA2010 奨励賞
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