HOME > 日々雑感:よくわからないこと?! > 時事問題 > またぞろ出てきた円高対策論:かつてのPKOでは6兆円の損をし、外為特会では、今現在で40兆円超の含み損になっている
11月22日の日経によれば、またぞろ公的資金を使った「円高対策論」が出てきているようだ。
http://www.nikkei.com/access/article/g=9695999693819481E0E3E2E0E58DE0E3E3E3E0E2E3E39797E3E2E2E2
10月31日の大規模な介入にもかかわらず、円相場は元に戻ってしまい、76円/ドル台で高止まりしているため、「有効な円高対策を」との声はやまず、霞が関や日銀が神経をとがらせている、という。
そこで、与党内で、「年金積立金で外債を購入できるのではないか」という構想が浮かんでいる、という。厚生年金と国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産額は約120兆円。現在は国内債券での運用が中心だが、その一部を米国債など外国債券に振り向けるという内容だ。GPIFが米国債での運用比率を高めれば、それに伴って円売り・ドル買いの取引が発生して、結果的に円売り介入と同じ効果を生み、円高是正が期待できる、という。
しかし、何度も繰り返すが、たとえGPIFの資産120兆円を使ったとしても、時間がたてば、今回のようにまた元に戻ってしまうだろう。かつてとはちがい、世界の投資マネーの規模は大きいし、円高の根本的原因が解決しない限り市場介入など全く意味がない。
尚、ここで、GPIFという名前が出てくることも問題だ。GPIFは現在問題となっている国民の年金資金の運用管理を行っている組織だ。過去10年以上にわたる低金利と株式市場の低迷で、運用環境が厳しい中、その運用利回りも低迷している。また、近年は、年金給付の金額が増加して、毎年、資金は出超となっている。つまり、総資産は減少している。
しかし、今までもそうだったが、運用環境などが厳しいからといって、むやみにリスクを取った運用は行ってこなかった。その運用は、資産と負債の正確に照らし合わせて運用を行ってきている。
それらを全く無視して、お金があるところなら何でもよいといった感覚で、「円高対策」に利用しようというのは如何なものか?
以前は、GPIFではなく、常に郵貯・簡保の名前が挙がったものだ。既に、かなりの年月が経過して忘れてしまった方や、全くご存知ない方も多いとは思うが、1990年代初めに、バブル崩壊によって株価が下落した際に、その株価を支えるために株価維持政策(PKO:Price Keeping Operation)なるものが行われた。つまり、郵貯・簡保のお金を使って市場から株式を購入したのだ。
之には多額の資金が投入され、1990年代後半や2000年代に入ってから株価が下落した際も、再度同じことを行うべきだという意見も再三あがった。しかし、この政策は御語地に失敗して、郵貯・簡保では6兆円あまりの実損が発生した。機会損失等を考えれば、この2~3倍くらいの損と考えてもよいだろう。当時は、郵貯・簡保は国有であったわけで、その資金は国民のお金とも言えるし、預金者や保険者のお金ともいえる。
また、GPIF以外にも、日銀が50兆円余りの資金を使って外債を購入したらという案も別途出されている。50兆円といえば、日本の1年間の税収よりも大きな金額だ。既に外為特会では、1年分の税収に匹敵する40兆円の含み損があるのだが、やっても意味のない為替の市場介入に何故このような暴挙が行われているのだろうか?
金融問題といえば、すぐにロックフェラーやラスチャイルドの名前を挙げて、ユダヤの陰謀論が叫ばれることが多いのだが、陰謀でも何でもなく、日本人が、自らの資産を食いつぶそうとしている。国際陰謀論でも何でもない、ただの国内問題だ。無為無策の政治家や官僚によって、国民の大事な資産が食いつぶされようとしている。
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