2012年3月/日々雑感:よくわからないこと?!

2012年3月

「電気を使えてるのは誰のお蔭ですか?」...東電は何も変わっていない

昨年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から早一年が経過しました。しかし、残念なことに、瓦礫の処理は全く目途が立ちませんし、原発関係はまだその終息に向けての道のりがはっきりしない状況です。

そのような中で、東京電力に関する驚くべきニュースが入ってきました。4月以降の値上げ(17%)を拒否した場合には、電力の供給を止めるというのです。また、その後再契約をした場合には、さらに高い料金(2割増し)を請求するというのです。

「独占」ということで今日のような地位が認められてきたのです。しかも、今回の事故が起こってからは多額の国民からの税金が投入されています。それにもかかわらず、この無法ぶりです。

昨年4月中旬に、大学を卒業して東京電力に入社した女性のmixiが炎上して話題となりました。その炎上した書き込みの内容は、「東京電力を批判していますが、今電気を使えてるのは誰のお蔭ですか?よく考えてから批判するように!!! 文句あるなら電気使うな!あなたみたいな陰湿な事をいう人間がいるから日本人の質が問われるんです。」というものだった。

結局、東京電力関係者の考え方は、1年たっても何も変わっていなかったのだ。

当初から先の東電の処理案は間違っていると主張してきましたが、どこまで東電のやりたい放題が続くのでしょうか?最近は、「A級戦犯」の東電の勝俣会長と勝財務次官がつるんで、「反国有化」で動いているそうです。ここは、同じく「A級戦犯」の枝野経産大臣に頑張ってもらい、東電を少しでもけん制していただくしかないのでしょうか?

今まで日本では、バブル崩壊後の銀行処理においてもそうだったが、責任の所在を明らかにしないで、その後の対応もなあなあですませてしまう(つまり、「破たん処理はしない」)ことが多かった。しかし、国民にとって重要なことは、東京電力の組織の存続ではありません。電力の供給が継続されることです。役員や従業員が変わっても、株主が変わっても、債権者が変わっても、火力発電所や送電網が無くなるわけではありません。東京電力の処理にあたっては、そのあたりを考慮して行ってもらいたかったのですが・・・

【Crossroad誌:掲載記事】 『おままごと』(child's play)(伊藤純代)(2012年2・3月合併号)

Crossroad誌:掲載記事】 『おままごと』(childs play)(伊藤純代)(201223月合併号)

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年23月合併号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。

毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。

今回は「伊藤純代」さんの『おままごと』(childs play)という作品です。

作品タイトル:『おままごと』(childs play

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コメント

作家、伊藤純代、のこの作品は、「おままごと」というタイトルのインスタレーションだ。伊藤の作品は、幼児期の記憶や体験に深く根ざしているという。「Another girl」などでは、一見すると、2人ないしは複数の少女が描かれているようだが、実は、体がつながっているという作品を製作して、我々の持つアンビバレントな精神構造を表現してきた。

今回の作品でもそれは見事に表現されている。「おままごと」というどこかほんわかとした日本語のタイトルに比して、英語のタイトルは「child’s play」となっている。筆者の勝手な想像だが、これは米国のホラー映画「Child’s Play」と関係があるのではないか・・・この映画(シリーズ)では、米国の子供たちが大好きな「Good Guy Doll」を、殺人鬼チャールズ・リー・レイ(チャッキー)の魂が乗り移ることで一瞬にして大変恐ろしい存在に変えてしまい、チャッキーは生身の体を手に入れるために人々を襲うことになる。チャッキーは何度もバラバラにされるのだが、魂は残っていて、何度も蘇ってしまう。今回の作品でも、人形(Doll)やドールハウス(Doll House)がモチーフとなっている。

今回の作品に登場する人形は、無数の人形(リカちゃんとバービー人形)をバラバラにして、それらを再び集めることで、等身大の人形を製作している。「トンボの内側を見たいが為にその殻を剥ぐという行為をくりかえした」という作家の幼児期の体験を再現するかのようです。人形と共に配された観葉植物も人形同様にバラバラにされたパーツを再び集めることで製作されています。

現代社会では、旧来の地域社会がばらばらになって、その結果として、人の生と死ということも日常生活から切り離されてきていしまいました。しかし、生と死は切り離すことが出来ず、死を身近なものとして認識することで、その日々の生活がより輝いたものになる、のでしょう。

今回の伊藤の作品も、バラバラにした人形のパーツを再び集めるという、「生と死」そして「死と生」という生命の果てしないサイクルや、「生と死」から逃れることのできないことからくる我々の魂の宿命のようなものに切り込んでいくもの、なのだろう。

略歴

1982年 長野県生まれ。

2009年 武蔵野美術大学修士課程造形研究科彫刻コース修了

■ 個展

2011「おままごと」、NANZUKA UNDERGROUND

2011EMERALD」、ギャラリー現、東京

2011Girls Generationswitch point、東京

2010Another girl」ギャラリー現、東京

2009TOY BOX」ギャラリー現、東京

2009「秘め事」switch point、東京

■ グループ展

2011「シャッフル」、NANZUKA UNDERGROUND

2011「トーキョーワンダーウォール2011」、東京都現代美術館、東京

2011「第6回大黒屋現代アート公募展」板室温泉大黒屋、栃木

2010Toyota Art Competition とよた美術展2010」豊田市美術館、愛知

2010「第5回大黒屋現代アート公募展」板室温泉大黒屋、栃木

2009「武蔵野美術大学80周年記念大学院修了展'08もの語る」東京都美術館、東京

2009AMUSE ART JAM 2009」京都文化博物館、京都

2008cross section」武蔵野美術大学内、東京

■ 受賞

2011「トーキョーワンダーウォール公募2011」大賞

2011「第6回大黒屋現代アート公募展」入選

2010Toyota Art Competition とよた美術展2010」準大賞

2010「第5回大黒屋現代アート公募展」入選

2009AMUSE ART JAM 2009」入選

「AIJ投資顧問: 年金2000億円 大半消失」・・・虎の子の年金が失われてしまう

最近は、気分が落ち込むようなニュースが多いのですが、AIJ投資顧問による「年金運用資産2000億円大半消失」というニュースは非常にショッキングなニュースです。

AIJ投資顧問は独立系の投資顧問会社だそうですが、同社の中心顧客は国内の企業年金で、運用受託資産は2000億円余りで、その大部分が消失しているといいます。顧客は企業年金でも、その中心は同業種の企業などが集まって作る「総合型」の厚生年金とのこと。しかも、運用受託した企業年金の数は100余りに達するとのこと。

企業年金が置かれている危機的状況

企業年金の資産運用は1990年のバブル崩壊以降深刻になり(ということは既に20年以上経過しているわけですが)、2000年以降は「代行返上」という言葉が大きく取り上げられ、年金制度改革及び資産運用改革について様々な議論が行われてきました。

その過程で、大企業などが運営する当時「単独・連合型」と言われた企業年金は、(JALや東京電力などを除いて)掛け金の引き上げや給付金の引き下げなどを含む制度改革及び運用目標の見直しなどを含めた資産運用改革を行ってきました。(残念ながら、だからと言って状況が大きく改善したということではありません。)

今回被害にあった総合型企業年金は、その母体が中小企業が中心であることから、掛け金の引き上げ・給付金の引き下げなどの改革は企業年金そのものを存続させるかどうかという議論につながるために、企業年金内部でも本格的な議論や改革が行われずに来てしまいました。総合型の企業年金の常務理事や事務長はほとんどが社会保険庁からの天下りで、企業年金をなくす方向での話(失業することになりますので)はしたがりません。

2000年以降、大手企業が運営する単独・連合型の企業年金は、年金資産の保証利回りをそれまでの5.5%から大きく引き下げてきましたが、総合型はずっと従来の5.5%を維持してきました。しかし、株式市場の低迷などで、5.5%の運用収益は確保できていませんので、ますます積み立て状況は悪化していました。

制度変更が出来ないわけですから、運用収益を稼がないことには、積み立て不足(一般企業でいえば「債務超過」状態)はさらに悪化します。実際、75%程度の企業年金(主として総合型)が積み立て不足となり、厚生労働省から改善要請が出されていた企業年金も多数でていました。

その為に、藁をもつかむような気持ちで、高い収益性をうたう、あるいは(株式市場が低迷を続けていましたので)どのような市場環境でも一定の収益(高収益でなくても)をあげる投資顧問会社への運用受託に走ってしまったというわけです。

AIJ投資顧問という名前自体今回初めて耳にしました。同社は日本証券投資顧問業協会に加盟していますが、会社の概要や運用受託資産の内容については全く報告していませんでした。そのような会社に120以上もの企業年金が運用委託をしていたということは、年金の制度あるいは年金資産運用の置かれている環境がそれほど深刻であることを表しているでしょう。

何故、長期間に亘って気づかれなかったのか?という疑問

何故、運用受託資産が消えてしまったのかは、今後解明されていくことを期待しますが、現時点で、疑問を感じるのは、何故、このような状態になるまで誰にも気づかれなかったのか?ということです。

運用を委託した企業年金には毎月、運用を受託した投資顧問会社から運用状況報告書が提出されています。AIJ投資顧問の場合には、この運用状況報告書が長期間にわたって粉飾が行われていたのでしょう。しかし、年金資産そのものは信託銀行が受託・管理を行っており、投資顧問会社が預かっているわけではありませんので、勝手に流用することも、その資産の運用状況の粉飾は簡単には出来ません。

また、信託銀行からも毎月、資産管理報告書が企業年金に提出されています。通常であれば、企業年金から厚生労働省や年金に加入している会社(事業所)への報告は、この信託銀行が報告している数値がもとになっています。

とすれば、信託銀行は一体何をやっていたのでしょうか?120以上の企業年金がAIJ投資顧問に運用受託していたとすれば、ほとんどの信託銀行がAIJ投資顧問の資産運用管理にかかわっていたはずです。

今回のケースでは、海外のオフショア(例えばケイマン)などで設立したファンドを購入するという形態がとられていたとのこと。ファンドは、AIJ投資顧問が、そのファンドの純資産価額を計算する海外の銀行と結託して実態とは異なる価格を出していたとすると、日本の信託銀行でもわからない、ということになります。

さらに今回の事件で噂されているのは、AIJ投資顧問は、実態的には同じビルに入っているグループ会社のアイティーエム証券と共謀していた可能性が高いらしい、ということです。同社についての記載はまた別の機会にしたいと思いますが、いい情報は何一つ出てきません。

今回の事件が、運用を行った結果として(その運用の失敗によって)運用資産が失われたのか?あるいは、当初から運用会社ばかりか証券会社や海外の銀行などが意図的に運用資産をどこかに流したのか?早期の解明が待たれるところです。

企業年金だけでなく基礎年金である厚生年金も同じ問題を抱えている

今回は新聞にも「企業年金」という文字が、意図的にかもしれませんが、目に留まります。しかし、この制度改革と資産運用改革の問題は、先にも記しましたが、もう20年以上も前から叫ばれてきている問題ですが、根本的な問題解決は全くなされていません。

日本の年金制度は修正積立制度というある意味特殊な形態です。現在積み立てられている資産をどのように運用していくかは、全体の制度がどのようになるかで全く変わってきます。例えば、従前のように5.5%の保証利回りを今後確保していく場合と、現在の経済成長率に合わせて12%を目標としていくのでは、取るべきリスクの水準が全く違ったものになります。また、既に始まってしまっているのですが、年金掛け金よりも年金給付金の方が多くなってくると、毎年、積み立てられた資産からの取り崩しを行わなければならないという状況になり、積立金の資産運用には様々な制約が課せられることになります。

「社会保障と税の一体改革」と言っておきながら、政府は年金の将来像などを明らかにしようとはしません。しかし、前述のように、将来像がどうなるかが明確にならないと、運営・管理の内容については決めることは出来ません。もっと言わせていただけるとすれば、「社会保障と税の一体改革」ではなくて、「経済と財政」という大きな枠組みについて検討しなければならないはずなのです。将来の全体像が示されないと、国民もどのような選択をすべきか判断することが出来ません。現在は、ただたた国民に「白紙の請求書」が突きつけられた状態なのです。

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