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【Crossroad誌:掲載記事】 『おままごと』(child’s play)(伊藤純代)(2012年2・3月合併号)
日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年2・3月合併号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。
今回は「伊藤純代」さんの『おままごと』(child’s play)という作品です。
作品タイトル:『おままごと』(child’s play)
コメント:
作家、伊藤純代、のこの作品は、「おままごと」というタイトルのインスタレーションだ。伊藤の作品は、幼児期の記憶や体験に深く根ざしているという。「Another girl」などでは、一見すると、2人ないしは複数の少女が描かれているようだが、実は、体がつながっているという作品を製作して、我々の持つアンビバレントな精神構造を表現してきた。
今回の作品でもそれは見事に表現されている。「おままごと」というどこかほんわかとした日本語のタイトルに比して、英語のタイトルは「child’s play」となっている。筆者の勝手な想像だが、これは米国のホラー映画「Child’s Play」と関係があるのではないか・・・この映画(シリーズ)では、米国の子供たちが大好きな「Good Guy Doll」を、殺人鬼チャールズ・リー・レイ(チャッキー)の魂が乗り移ることで一瞬にして大変恐ろしい存在に変えてしまい、チャッキーは生身の体を手に入れるために人々を襲うことになる。チャッキーは何度もバラバラにされるのだが、魂は残っていて、何度も蘇ってしまう。今回の作品でも、人形(Doll)やドールハウス(Doll House)がモチーフとなっている。
今回の作品に登場する人形は、無数の人形(リカちゃんとバービー人形)をバラバラにして、それらを再び集めることで、等身大の人形を製作している。「トンボの内側を見たいが為にその殻を剥ぐという行為をくりかえした」という作家の幼児期の体験を再現するかのようです。人形と共に配された観葉植物も人形同様にバラバラにされたパーツを再び集めることで製作されています。
現代社会では、旧来の地域社会がばらばらになって、その結果として、人の生と死ということも日常生活から切り離されてきていしまいました。しかし、生と死は切り離すことが出来ず、死を身近なものとして認識することで、その日々の生活がより輝いたものになる、のでしょう。
今回の伊藤の作品も、バラバラにした人形のパーツを再び集めるという、「生と死」そして「死と生」という生命の果てしないサイクルや、「生と死」から逃れることのできないことからくる我々の魂の宿命のようなものに切り込んでいくもの、なのだろう。
略歴:
1982年 長野県生まれ。
2009年 武蔵野美術大学修士課程造形研究科彫刻コース修了
■ 個展
2011「おままごと」、NANZUKA UNDERGROUND
2011「EMERALD」、ギャラリー現、東京
2011「Girls Generation」switch point、東京
2010「Another girl」ギャラリー現、東京
2009「TOY BOX」ギャラリー現、東京
2009「秘め事」switch point、東京
■ グループ展
2011「シャッフル」、NANZUKA UNDERGROUND
2011「トーキョーワンダーウォール2011」、東京都現代美術館、東京
2011「第6回大黒屋現代アート公募展」板室温泉大黒屋、栃木
2010「Toyota Art Competition とよた美術展2010」豊田市美術館、愛知
2010「第5回大黒屋現代アート公募展」板室温泉大黒屋、栃木
2009「武蔵野美術大学80周年記念大学院修了展'08もの語る」東京都美術館、東京
2009「AMUSE ART JAM 2009」京都文化博物館、京都
2008「cross section」武蔵野美術大学内、東京
■ 受賞
2011「トーキョーワンダーウォール公募2011」大賞
2011「第6回大黒屋現代アート公募展」入選
2010「Toyota Art Competition とよた美術展2010」準大賞
2010「第5回大黒屋現代アート公募展」入選
2009「AMUSE ART JAM 2009」入選
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