HOME > 日々雑感:よくわからないこと?! > よくわからないこと?! > 大鹿靖明著『メルトダウン』・・・原賠法では国も免責される?!
311から1年が経過した。最近、大鹿靖明氏の『メルトダウン』という本を買って読んでいるのですが、第1部の『悪夢の1週間』では、身震いをするような1年前の記憶が思い起こされてきます。
今日、ここでは、第2部『覇者の救済』の中に描かれていた「原子力損害賠償法」(原賠法)第3条の問題について触れてみたいと思います。
これは、原発が事故を起こした際に、電力会社に賠償責任を負わすことを明記する一方で、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない」と、賠償に関する電力会社の免責規定を設けているというものです。東電の「救済」スキーム作成の際は、この免責条項が適用されるのかどうかが、随分議論となりました。
しかし、この『メルトダウン』で解説されていることを見ると、あの議論は一体なんだったのだろうか?と思ってしまいます。というもの、「異常に巨大な天災地変」の際には、電力会社に代わって賠償責任を負う「主体」がいなくなってしまう、というのです。更にいえば、電力会社が免責されるだけでなく、政府もその賠償責任を負わない、というのです。
原賠法では、第16条で、電力会社が単独では耐えられない損害賠償を追う場合には、政府が「必要な援助を行うものとする」と定めています。しかし、第16条の規定を超えるような「異常に巨大な天災地変」が起きた場合、原賠法は第17条で、政府は「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずる」としか書かれていないとのこと。法案提出時の国会質疑で、中曽根科技庁長官は、「災害救助法程度のことはやるという、最低限のことは言えると思いますが、それ以上は、その時の情勢によって、政府なり国会なりが決めることになるだろうと思います」と答えている。さらに、「第3条におきまする天変地変、動乱という場合には、国は損害賠償をしない、補償してやらないのです。関東大震災の3倍以上の大震災、あるいは戦争、内乱というような場合は、原子力の損害であるとかその他の損害を問わず、国民全体にそういう被害が出てくるものでありますから、これはこの法律による援助その他でなくて、別の観点から国全体としての措置を考えなければならぬと思います」としている。
そのような場合には、国全体に影響が出るから、もはや原賠法の出る幕ではない、その時になったら改めて考えるしかない、というような内容です。行ってみれば、法はそのような事態を想定していなかったということでしょう。
しかし、このような内容は今まで全く語られることはありませんでした。東電やマスコミなどが、このような事実を知らなかったとはとても思えません。東電の「救済」のために、電力会社の免責事項のみが語られるだけでした。しかい、これによって利益を得る人たちが他にもいました。「銀行」です。銀行は、原発事故直後に2兆円もの資金を追加的に貸し込んでいました。もし、法的整理などの事態になると大変なことになります。原賠法の内容が正しく解説されなかったのも、そのような勢力の存在があったからでしょう。
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