江田憲司著『財務省のマインドコントロール』・・・橋本発言は周到に準備されたものだった?!/日々雑感:よくわからないこと?!

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江田憲司著『財務省のマインドコントロール』・・・橋本発言は周到に準備されたものだった?!

江田憲司氏の『財務省のマインドコントロール』に、本の主たる内容からは若干外れるかもしれないが、非常に興味深い内容が書かれていた。

それは「米国債の償還金15兆円をなぜ使わない?」という項に書かれていることで、19976月のデンバーサミット後に、橋本総理がニューヨークに立ち寄った際に行った講演の質疑応答に関わるものだ。講演内容の詳細は後段で記載しますが、「何回か、財務省証券を大幅に売りたいという誘惑にかられたことがある」という橋本総理の「有名」な発言についてです。

この発言を受けて、NYSEの株価は192ドルと、ブラックマンデー以降の最大の下げを記録して、市場に大きな混乱をもたらしました。当時は、「橋本総理は経済音痴」という批判を呼びました。

私も文字通りそのように受け止めていたのですが、実は、周到に準備をしたうえでの発言であったというのです。

江田氏は、当時、橋本総理の政務担当秘書官として立ち会っていたそうで、当時の自身の日記なども紹介しています。その橋本総理の発言は、旧知の財務官経験者との打ち合わせの上で意図的に行ったもので、講演の冒頭で、「金融関係者はいないでしょうね」と冗談めかして言ったのも、相当インパクトのある発言であることがわかっていたからだそうです。

日本の外貨準備は積み上がるばかりで、現在の残高は本年3月末で12900億ドルに達しています。本来の目的からすればこのように巨額の外貨準備など必要ないはずで、必要以上に積み上がったものについてはタイミングを見ながら、適正な水準に調整する必要があるはずです。しかし、今までそのようなことは一切行われてきませんでした。それは、外貨準備が増加することで入ってきた資金で米国債を購入すること自体が目的化してしまったからで、それを減らすという考え自体が否定されてきたからでしょう。

昨年も安住大臣の下で、大きな為替介入が行われましたが、今や為替の市場介入自体が全く意味を成しません。一時的には対ドルでの円安方向へ動かすことは出来ても、時間の経過とともにすぐに戻ってしまいます。円高の原因を「投機的な動き」として、ヘッジファンドなどを批判するのですが、今や、日本政府が為替介入すること自体が、ヘッジファンドに「確実に儲ける機会」を与えてしまっています。今現在では、外貨準備は40%程度の含み資産を抱えているとみられています。つまり40兆円あまりが為替介入によって失われているわけです。

外貨準備の本来の目的やあり方を今一度見直す必要があるでしょう。

そのなかで、時々の政治状況によっても異なるわけですが、今回紹介されているように、少なくとも、公式ではないようですが、「意図的に外貨準備について米国に対してメッセージを送った」ことがあるということが分かったことは、大変興味深いことだと思います。中国のように、日本も、米国ともっと突っ込んだ本音ベースの話をできるようになってほしいものです。

以下、同著のなかから当時の橋本発言を転記させていただきます。

「ここに連邦準備制度理事会やニューヨーク連銀の関係者はいないでしょうね。実は何回か、財務省証券(米国債)を大幅に売りたいという誘惑にかられたことがある。ミッキー・カンター(元米通商代表)とやりあった時や、米国のみなさんが国際基軸通貨としての価値にあまり関心がなかった時だ。(財務省証券を保有することは)確かに資金の面では得な選択ではない。むしろ、証券を売却し、金による外貨準備をする選択もあった。

しかし、仮に日本政府が一度に放出したら、米国経済への影響は大きなものにならないか。財務省証券で外貨を準備している国がいくつかある。それらの国々が、相対的にドルが下落しても保有し続けているので、米国経済は支えられている部分があった。

これが意外に認識されていない。我々が財務省証券を売って金に切り換える誘惑に負けないよう、アメリカからも為替の安定を保つための協力をしていただきたい。」

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