【Crossroad誌:掲載記事】 『明日』(鈴木紗也香)(2012年5月号)
【Crossroad誌:掲載記事】『明日』(鈴木紗也香)(2012年5月号)
日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年5月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。
今回は、「鈴木紗也香」さんの『明日』という作品です。
作品タイトル:『明日』
コメント:
私たちが、いまここに存在するというときには、常に3つの宇宙=コスモスが存在します。一つ目は、大宇宙(マクロ・コスモス)で、二つ目が人間・人の肉体で、小宇宙(マイクロ・コスモス)です。最後が心の宇宙(マインド・コスモス)です。かつて、私たち人類には、この3つのコスモスがうまく溶け合って暮らしていた時代がありました。人類は、この地上にある、あらゆる存在と響き合う「FEELの世界」の中にいました。これは、個体生命としては物理的には別であっても、全ての存在と見えない糸でつながっているという感性で、四季のめぐりから生み出される大地の豊饒さを受け、循環や生死それらすべてを一つととらえていました。
それが、頭で考える「THINKの世界」が発達していったことで、大自然や生命体との一体感から離れていってしまいました。このTHINKの世界は、物理的な領域を他者から分離し、さらに自分自身を自然現象から客観的な存在として切り離していきます。これが文明の性格といってもよいでしょう。
この「明日」という作品は、自身の内なる世界と、それとは別に存在する他者の世界、そしてそれらを包含・関係する大自然という世界を意識・俯瞰しています。自身がいる世界(「部屋」)と、「窓」を通して見える外の世界をとらえ、さらにそれらを鳥瞰するかのように描かれています。また、少女(作家自身か…)の姿や、外の明るい光などから少女(作家自身)の内なる世界を描かれています。
現代社会はまさにこのTHINKの世界が拡大して、私たちの存在自体が他社と切り離されて、お互いの存在を感じ、響き合うことが出来ないようになっています。しかし、そのなかでも、常に自分以外の個体生命と一体であろうとする「共感」が無意識的・意識的に働いています。作家の作品を制作するという作業は、このような共感を探し求めるものではないのでしょうか?
その共感が、見つかった時に、3つの宇宙=コスモスが一体化し、他者の姿の見え方も変わってくるのでしょう。
作品で描かれる少女には、光の束のようなものがすり注いでいますが、それは明るい「明日」を感じさせる3つの世界=コスモスとの見えない糸ではないでしょうか?
略歴:
1988 ロンドン生まれ
2012 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
多摩美術大学 大学院油画美術研究絵画専攻1年在籍
受賞歴
2009 「ヤング・アーティスト・ジャパン Vol.2」タグボート・オータムアワード
2010 「ワンダーシード 」
「トーキョーワンダーウォール」
「Presentation & Exhibition」
2011 「ワンダーシード 」
「アーティクル賞/海老塚耕一賞」
「シェル美術賞/島敦彦賞」
その他
2011 第26回ホルベインスカラシップ奨学生
個展
2010 ギャラリーMoineau、東京
2011 トーキョーワンダーサイト本郷,東京
2012 ギャラリーQ、東京
グループ展
2009 「ヤング・アーティスト・ジャパン Vol.2」
タグボート・オータムアワード、東京
2010 「ワンダーシード」トーキョーワンダーサイト渋谷、東京
「トーキョーワンダーウォール」東京都現代美術館、東京
「Presentation & Exhibition」アートコートギャラリー、大阪
「unknown possibility 04」新宿眼科画廊、東京
「YASMArt」ギャラリー色彩物語、東京
2011 「Emerging Artists 2011- 今の絵画展」ギャラリーQ、東京
「The 3rd COREDO Women’s Art Style 2011」コレド日本橋、東京
「ららぽーと東京オフィース・アート・エクスビション」ららぽーとマネジメント株式会社、東京
「第4回アーティクル賞」ターナーギャラリー、東京
「風景の気配2011」新宿眼科画廊、東京
「シェル美術賞」代官山 ヒルサイドフォーラム、東京
2012 「多摩美術大学卒業制作展」国立新美術館、東京
「ART in LIFE」銀座三越ギャラリー、東京