2012年7月/日々雑感:よくわからないこと?!

2012年7月

【Crossroad誌:掲載記事】 『咲く花』(岩渕華林)(2012年7月号)

 Crossroad誌:掲載記事】 『咲く花』(岩渕華林)(20127月号)

日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年7月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。

毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。 

今回は、「岩渕華林」さんの『咲く花』という作品です。

作品タイトル:『咲く花』

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コメント:
 
「ハリネズミのジレンマ」という言葉があります。寒空の下にいる2匹のハリネズミが、お互いに身を寄せ合って温めたいが、針が邪魔をして近づけないという、ドイツの哲学者ショーペンハウエルの随想録に収められた寓話によるものだそうです。心理学的には、「両者が近づけない」という否定的な意味と、「両者にとってちょうど良い距離を見出す」という肯定的な意味の両方で使われるといいます。
もともとはハリネズミではなく「ヤマアラシ」だったのが、「新世紀エヴァンゲリオン」第4話のサブタイトルに「ハリネズミのジレンマ」として使用されてからハリネズミとなったという説があります。
尚、実際のヤマアラシは針の無い頭を寄せ合って体温を保ったりしているそうです。
 
いずれにしても、社会生活を営む私たちにとって「自己の自立」と「相手との一体感」の双方を追求するための「距離感」は大切で、一般的な人間関係はもとより、男女の間についても同様です。近づきすぎて「傷つけ」また「傷つき」、一旦、大きく離れた後に、また再び勢いがついて近づきすぎてしまう。その繰り返し・・・
「適正な距離」を見出すためには、相手の針の長さを知ることと同時に、自分自身の針の長さも知らなければなりません。
 
本作品のタイトルは、「咲く花」です。花弁のようなミニのチュール・スカート(?)から、めしべを思わせる脚が出ています。そのめしべの周りには早くも蝶が舞い、そして、めしべの近くには花粉が舞っているようにも見えます。しかし、普通の状況と違うのは、めしべのような脚につけたストッキングからは、本来ないはずの刺が出ていることです。ストッキングと足にはいたシューズは体と一体化してしまっているようにも見えます。これでは近づく蝶を傷つけてしまい、ひいては自身の存在自体を危うくしてしまいます。
 
この刺は、花の成長過程と共に無くなっていくのでしょうか、はたまた刺があっても、蝶との間で適切な距離感・関係を持つことが出来るのでしょうか?これには花だけでなく、蝶という「相手」側の対応の問題もあるでしょうが、蝶は刺の存在に気付かないかのように近づいてきています。
 
まさに生の限りに「咲かんとする花」の真の姿とは何なのでしょうか?
「ハリネズミのジレンマ」といったような場合に、私たちは、相手を意識した距離感というものを考えてしまいますが、この作品からは、相手の側というよりも、まずは自分自身の針の長さを知らなければならないという「花」の真摯な意思のようなものを感じます。
 
略歴
 
1985年 神奈川県生まれ
2009年 東京造形大学美術学部絵画専攻版表現コース卒業
 
取扱い画廊:ギャラリー椿
(東京都中央区京橋3-3-10-1F TEL:03-3281-7808  www.gallery-tsubaki.jp)
 
個展
 
2012年 岩渕華林展(ギャラリー椿GT2)
2010年 岩渕華林展(ギャラリー椿GT2)
2009年 岩渕華林展(ギャラリー坂巻)
2007年 DRESS ROOM(node・東京造形大学学生運営スペース)
 
グループ展
 
2011年 Anothe side of Images(麻布十番ギャラリー)
YOUNG ART TAIPEI(台湾)
第20回佐藤美術館奨学生展(佐藤美術館)
第5回山本鼎版画大賞展(長野県上田創造館)
2010年 daegu art Fair 2010
KIAF2010(韓国)
ART TAIPEI 2010(台湾)
SUMMER FAIR (ギャラリー椿)
Art Fair in SPAZIO1 YOGA(Spazio1用賀)
消えない眼差しーその先の「風景」ー(相模原市民ギャラリー)
30th MINI PRINT INTERNATIONAL OF CADAQUES(スペイン)
9th Lessedra World Art Print Annual2010(ブルガリア)
現代アートコレクション展(松山三越)
2009年 Handle(養清堂画廊)
Soul of Asian Contemporary Art(韓国,Hakgojae Gallery)
Concentration展(ギャラリーQ)
Znews(九美洞ギャラリー・六本木)
2008年 Small Selections(ギャラリー坂巻)
岩渕華林/菅野静香展(ギャラリー坂巻)
HHHANDO-東京造形大学版表現コース-(文房堂ギャラリー)
2007年 Obsessional object(エリスマン邸・山手)
White collection(大倉山記念館)
Old girl(西洋館234番館・山手)
CAM - twin exhibition - (ねこのや店内・原宿)
山手111番館図書室(山手111番館)
2006年 Lightroom vol.3(神奈川県民ホール第一展示室)
明るい部屋(西洋館234番館・山手)
小野冴子・岩渕華林・吉田襟香展(東京造形大学学内)
横浜風景(三渓園・旧燈明時本堂)
受賞歴
第20回佐藤国際文化育英財団奨学生
第30回カダケス国際小版画展 入選(スペイン)
第9回レッセドラ国際版画展 入選(ブルガリア)
第7回三菱アートゲートプログラム 入選
第2回NBCメッシュテックシルクスクリーン国際版画ビエンナーレ 入選 
Via art2009 入選
第33回、35回全国大学版画展 町田市立国際版画美術館買い上げ収蔵賞
第13回ウッジ国際小版画展 入選(ポーランド)
 

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