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【Crossroad誌:掲載記事】 『赤い花』(辻川奈美)(2013年5月号)
日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年5月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。
今回は、「辻川奈美」さんの『赤い花』という作品です。
作品タイトル: 『赤い花』(水彩絵具)
コメント:
意外な感じを持たれる方もいるかもしれないが、この作品を見ていて般若心経の一節である「色即是空、空即是色」という言葉が浮かんできました。
かなり有名な言葉なのでほとんどの方がご存知だと思いますが、「色」はこの世に存在する物質的現象で、私たち個々人もこの「色」です。それに対して「空」というのは色を存在せしめる「様々な相互関連性」(一般的には「因縁」というようです)で、必ずしも固定的な実態があるものではないそうです。
西欧では、このような相互関連性という考え方は薄く、デカルトに見られるように物質と精神を分離して考える二元論を中心にしてきました。このように人を分けることから発して、それ以外の世界も個々の独立したものから成り立っているという見方が中心となっています。
これによって、西欧の(自然)科学は飛躍的に発展し,物質をどんどんより小さな存在へと分解をして、現在では素粒子レベルまできています。
あまり二元論的な話にはしたくないのですが、東洋の考え方はそれとは方向性がかなり異なります。存在そのものを相互関連性から捉えていきますので、物質を細かく分解していくのではなく、それとは反対に、全体を有機的に捉え、認識される物質は他との関係で存在するものととらえます。従って、すべての事柄が有機的で、流動的です。そこには、「時間」と「変化」も織り込まれていくことになります。そしてまた、ただ単に物質的なだけではなく、「精神的」なものともなります。
さて、この「赤い花」という作品ですが、二言論的な観点からは奇妙な点が沢山あります。画面隅々にまで細かい書き込みがなされ、全面に日差しが当たり影がほとんど見られないこと、タイトルにある「赤い花」が他のモノに比べて非常に大きいこと、場所は多分日本なのでしょうが、象やキリンなどが登場すること、などなど。しかし、その明るさや赤い色が全面を覆うことで、より日陰(影)の存在を意識させられたりと、全体としては、全く違和感を感じないのです。一見、バラバラであるようなそれぞれの存在が、絶対的なものではなく、相対的で、そしてまた流動的で、うまく溶け合ってしまっています。
そのような印象を受けるのは、きっと作家自身が、自身の存在そのものに、他の存在との相互関連性や、自然界全体の合一性などを感じ、ポジティブに向かい合っているからなのではないでしょうか・・・
略歴:
1978年: 東京生まれ
個展:
2012年: 「希代夢幻」 TENGAI GALLERY/東京
[今後の個展予定]
2013年9月13日~10月15日 TENGAI GALLERY/東京
受賞歴:
2008年: 「イラストレーション」ザ・チョイス第160回(山口晃選)
2010年: 「イラストレーション」ザ・チョイス第175回(会田誠選)
「イラストレーション」ザ・チョイス第28回年度賞入賞
2011年: 「イラストレーション」ザ・チョイス第177回(天明屋尚選)
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