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【Crossroad誌:掲載記事】 『夜に離陸』(築野友衣子)(2013年9月号)
日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年9月号に以下の記事が巻頭エッセーとして掲載されましたのでご紹介させていただきます。
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。
今回は、「築野友衣子」さんの『夜に離陸』という作品です。
作品タイトル: 『夜に離陸』(Departure to the Night.)
コメント:
人はどのようになったら幸せだと感じるようになるのだろうか?日本は戦争による国土の荒廃も経験したが、今では自らの家に住むことが出来るし、日々三度の食事をすることが出来る。家には、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの電化製品もあり、家事にかかる時間はかなり減り、カルチャーセンターなどにも通うことが出来るようになった。旅行で温泉にもつかることも出来、時には海外にも出かけることが出来る。医療も整っていて、平均寿命も世界最長といってよいだろう。それでもテレビや新聞には、暗いニュースがあふれている。一体どのようになったら、現代人は幸せだと感じるのだろうか?
2011年後半に、ブータン国王夫妻が来日して、「国民総幸福量」という考え方が話題となった。「国民総幸福量」(Gross National Happiness, GNH)とは文字通り、「国民全体の幸福度」を示すものだそうで、物質面ではなく、精神面での豊かさを基準に考えていくということだろう。
ビジネス・スクールでこのような話になると「目標設定…方法論…達成度」というようなことになるのかもしれない。しかし、物質面での話しであれば、また、とりあえず目標を達成したかどうかという充足度という面で言えば、その人たちは幸せだと感じなければならない、ことになってしまうのでは…?
しかし、とりあえず何でもそろっている現代人には、何を目標にしたらよいのか、あるいは何をやりたいのか、が分からずに、途方にくれてしまう人や、あるいは身近な物質的目標に身を任せてしまう人も出てくる。物質的な目標は、その達成自体が目的化することが多く、それは限りなく膨張しつづけるので、いつまでたってもその目標を達成することが出来ずに苦しむ人も少なくない。
近年の幸福感に関する心理学的・精神医学的な研究によれば、幸福感の度合いを決めるのは、個々人の精神的な特徴だという。幸福だと感じる人に共通する内的な特徴は、①自分自身のことが好きであること、②主体的に生きているという感覚を持てていること、などであるという。つまるところ、自らの「心のありかた」の問題のようだ。
この世に肉体を持って生まれてきたからには、その「生きていること」自体に対して、とことん「喜び」を感じことが大事で、自身の「生」を喜びつくすことが、その生の根源たる宇宙の生命と一体化する(本来は一体なのでしょうが…)ことにつながるのでしょう。
この作品は、『夜に離陸』(”Departure to the Night”)というタイトルですが、「夜」というと、すぐに否定的なイメージを持ってしまいがちですが、見方を変えれば、「月」にみられるように「夜」は生命にとって非常に重要であり、「陰陽」の世界でいえば、「始まりの中に終わりがあり」「終わりの中に始まりがある」という永遠に続く流れの中の瞬間にすぎません。「夜」を否定的に捉えるのではなく、その「生」の滔滔たる流れに身をゆだねることで、自身の世界を変えることが出来るのではないか…。作者自身の心も大きく変わっているに違いありません。
略歴:
1985年 神奈川県生まれ
2008年 多摩美術大学絵画学科油画専攻 卒業
2010年 多摩美術大学大学院美術研究科 絵画専攻修士課程 修了
【個展】
2007年 『LUMINOUS!』 (鑓水青年美術館・神奈川)
2009年 『あなたへの海』(川田画廊・神戸)
2013年 『夜に離陸』(国立アートイマジンギャラリー)
『天使と恋に落ちた娘の話』(Liaison Café・渋谷)
【グループ展】
2005年 『うふふ展』(みなとみらいギャラリー・神奈川)
2008年 『13seas』(mois café・下北沢)
2009 年 『CIRCLE展』(四谷CCAA ランプ坂ギャラリー) 『Archives』(シンワアートギャラリー)
神戸アートマルシェKAMに、川田画廊より出品(新神戸クラウンプラザ)
【受賞歴】
2007年 パルテノン多摩公募展入選
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