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【Crossroad誌:掲載記事】 『ERI』(石橋ユイ)(2013年11月号)
日本語と中国語のバイリンガル・マガジン『Crossroad誌』本年11月号に以下の記事が巻掲載されましたのでご紹介させていただきます。
毎月このような形で同誌の『巻頭エッセー』として、日本の若手アーティストを紹介する記事を書かせていただいております。同誌は、中国の華南地方(主として 広東省と香港)を中心に、ビジネス情報を主体としてはいますが、文化や芸術等様々な情報を発信している雑誌です。編集部は、広東省・深圳市にあります。
今回は、「石橋ユイ」さんの『ERI』という作品です。
作品タイトル: 『ERI』
コメント:
学校で、世界の四大文明とは、メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・黄河文明だと習った記憶があります。しかし、最近は、新たな遺跡の発掘などで、状況が変わってきているようです。中国では、黄河文明と並ぶものとして長江文明が独自の文化を持っていたとされるようになっています。長江文明は、長江流域で起こった複数の古代文明の総称で、文明の時期としては紀元前14000年ごろから紀元前1000年頃までで、後の楚・呉・越などの祖になっていると考えられています。以前は、中国の文明の発祥は黄河流域で、その後、長江流域などの周辺地域に広がっていったと見られていたのですが、1970年代に、浙江省で河姆渡遺跡(かぼといせき)が発見され、稲作・高床式住居といった黄河文明とは異なる独自の文化を持っていたことが発見され、それまでの定説が覆されることとなりました。
その長江文明に属する遺跡の一つに四川省の三星堆遺跡(成都から北に50km程)があります。三星堆では、異形の青銅製の仮面や巨大な人物像が多数出土しています。なかでも「青銅縦目仮面」と呼ばれる目が前面に筒状に突出し、額にいわゆる第三の目のような瞳のある(巨大な)仮面が多数出土しています。諸説ありますが、これは「地球外知的生命体」(宇宙人)を表しているのではないかという人達もいます。
今回、注目したいのは「青銅神樹」という青銅製の扶桑樹です。殷代晩期のもので、樹高が約4m、3階構造のもので、幹の各層に枝が3本ずつ張り出しており、それぞれの枝に1羽、全部で9羽の霊鳥が留まっています。枝先には果実がなり、樹の下層には頭を下に向けた1頭の龍が這っているものです。
この「神樹」は、古来からの「天」の思想を表したものだと思われます。天は、人の上にある存在、人を超えた存在をあらわすものとされます。物理的にも、人の上方、空の方向を示すとされ、その意味で空に近い大樹は、天と繋がるもので、鳥は天と人(あるいは地)をつなぐものとされ大事にされました。この「神樹」はまさにそのような考え方を表したものです。
また、天は人の上にある存在としながらも、後に「天人合一」と体系化されるように、当時の人たちは「天」「神」「宇宙」あるいは「自然」と一体になっていたでしょう。そこには、「喜び・楽しさ」「苦しみ」「悲しみ」など様々なものが存在したでしょうが、すべてのイノチと繋がり合い、響きあいながら、存在するものを全て受け入れて、暮らしていたに違いありません。
今回紹介させていただいたのは、「ERI」という作品です。天に届かんばかりに力強く上方に伸びている髪、そしてそこには霊長を呼び込もうかと言わんばかりの赤い実がなり、その反対方向には、地へと根を強く張らんとするかのような髪が描かれ、眼は限りなく広がっているような深淵な空間のようであり、また限りなく遠くまで届きそうな光を発しているようでもあります。現代的でありながら、なにか時代や空間を超越した「天」「神」「宇宙」あるいは「自然」と繋がる、あるいは一体になってしまいそうな、まさに三星堆遺跡で発見された「神樹」を思い起こさせるような、不思議なエネルギーを感じる作品です。
略歴:
1985年 神奈川県生まれ
2011年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業
個展:
2013年10月 Shonandai MY Gallery(東京)にて個展開催予定
グループ展:
2006 年 「Art fight in ASO」JR内牧駅、ASO田園空間博物館(熊本)
2007 年 「vita art 2007」シンワアートミュージアム(東京)
2008年 「うひひの日 vol.1」下北沢屋根裏(東京)
「秘すればこそアート」ギャラリーQ(東京)
「うひひの日 vol.2」渋谷ラ・ママ(東京)
「アジア・トップ・ギャラリー・ホテル・アートフェアー」ギャラリーQ、
ブースホテル・ニューオータニ(東京)
「ときめき☆鑓水ランデヴー 相模原SP」相模原市民ギャラリー(神奈川)
2009年 「marble & marble」多摩美術大学内(東京)
「marble & marble」ギャラリーQ(東京)
2010年 「パレル・ピルレム・ポレリレム展」ターナーギャラリー(東京)
「forest Village展」あざみ野市民ギャラリー(横浜)
「八木仁志 写真展 彫刻家の風と足音」ギャラリースペース遊(神奈川)
2011年 「東京五美術大学連合卒業・修了制作展 」国立新美術館(東京)
「MY Harmonious Exhibit 2011」 Shonandai MY Gallery(東京)
2012年 「ART TAIPEI 2012 台北國際藝術博覽會」台北世界貿易センター(台北)
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