HOME > 新井信介 「京の風」 > 日本のアイデンティティー > 陛下の覚悟。「生前退位」表明。摂政も置かず、殯(もがり)も否定で、政治概念の「神聖さ」消失。
熊本から戻って、東京のK2O事務所で、陛下の会見内容を確認しました。
まさか、これほどのご決意とは。
これが、私の感想です。
法改正の難しさなどを踏まえ、 自らは、退位するが、摂政を残すのではないか、と予想していたのですが、 今回の生前退位のご意向では、
摂政も置かず、しかも、殯(もがり)に伴う、一連の儀式まで、完全に否定されました。
昭和天皇の「大葬の礼」と 今上陛下の即位の儀では、「神である天皇」としての神格の継承式の面があったのですが、
今回陛下は、完全に、日本国憲法が規定する、日本国の天皇、すなわち、国家と、国民統合の象徴である自分を、改めて表明し、それを、日本国民に求めました。
これは、自らの神格の完全否定です。国民の安寧を祈る、祭主である、との宣言です。
それ以外のいかなる考えも認めず、為政者は、自分を利用するな、という厳命です。
これは、現代の天皇には、明治憲法での「神聖にして不可侵」という神威はなく、それを語ること、その神威を前提にして、国事行為をすることを、すべて、戒めるものです。
これは実は、明治憲法での、皇国史観ファンタジーを否定するにとどまらず、 日本書記から続いている、天皇像や天皇観を完全に脱却するものです。
具体的に言えば、戦前の軍国主義ノスタルジーに没頭する人間の否定です。神武天皇の赤子(せきし)からなる民がいるのが日本国だ、という政治概念を語る人間に対し、そんなお伽話をもうやめない、と叱責しているのです。
これに伴って、当然のこと、日本の神社界の体系も変わります。
日本会議や神社本庁の面々には、戦後、国家(統治体)と国民統合の象徴となった天皇に、明治期に伊藤博文らによって政治的に創作された、日本民族の中核として神聖さを、この21世紀に再度持たせ、自らはその輔弼をしたり、場合によって、自らがその代理になったとして、天皇の神意を広めるという名目で、対外的な軍事拡大を正当化する、もくろみの者がいました、
そうした人間に対し、完全に、その根拠を消しているのです。
そして、自らが、国民の声に耳を傾けるとして、民意を無視して戦争に向かいたがる為政者に、大叱責をしたのです。
しかも、この放送を、CNNが全世界に流した。
これは実は、1300年前に藤原不比等によって作られた、天皇の政治的な神聖さの終焉をなすものです。
摂政も、モガリも、天皇の神聖さを担保するものとして、その地位や儀式が存在したのですが、もう、不要だと。
これは、いわば、
不比等が作り出した、イザナギ・イザナミによってオノコロ島(沼島)で国が誕生したという、国産み神話に、もはや、何ら、現実世界での政治的力を与えてはならないとする宣言です。今上陛下は、みずから、天皇ファンタジ―を終わりにしたのです。
実は、日本列島に、「天皇を創った」という一族があって、その長老が、この2月7日に亡くなったばかりでした(この人物の死は、4月6日に関係者に流れ出した)。
今回、天皇にまつわる、政治的「神威」が無くなったことは、昨年9月の国連総会で、バチカンの法王フランシスコが、「十字架には神の力はない。神は、私たちが撒いた種を生長させ、花を咲かせ、実をならせる力である」と、言ったことに呼応します。
政治が神を語ることで、国民を戦争に駆りだしてきたのが、これまでの人類社会ですが、これが、日本では、ようやく、今日、完全に否定されたのです。
2016年8月8日は、永遠に、記録される記念日になりました。
まさに、今日の放送は、「稲の根本に鎌をあてがう」のそのトドメの一撃になりました。陛下御本人が、日本会議や神社本庁、そして、日本版の軍産複合体の知的幼さと、政治的危うさに、本当に心を痛めていらしたことが、判ります。
私たちは、日本文化の核としての、天皇について、もっと、きちんとした定義つくりが必要になりました。
今上陛下の言葉にある「国民の声に耳をあてがう」。 ここに、私は、第二代目の綏靖(カム・ヌナカワ・ミミ)の名前との共通点を見て、同じ姿勢を感じます。 ヌナカワとは、縄文の女神であり、自然そのものです。
記紀にある、神話編から続けられる人間天皇の誕生と、実際の日本列島での王権の誕生とその推移のドラマを、きちんと対比させないといけません。
特に、カムヤマトイワレビコとは何者か? さらに、神武とは、何者なのか?
なぜ、ハツクニシラスが、初代の神武と、第10代の崇神にあるのか?
そして、縄文時代からの霊性は、今の天皇に、どのように、引き継がれているのか?
これらは、私たちが、12年間、真剣に、解明に努めてきたことです。
「内の先祖が天皇を創った」という、イカヅチこと金井氏の祖先は、第10代崇神のときに、日本史に登場しています。これは、3世紀で、黄巾の乱の後の、卑弥呼の時代のことでした。
私は、大陸・半島・列島の人間が、それぞれ納得できる古代史を完成させたいと思います。
◎ そして、連絡です。
今回の「生前退位のご意向」発表を踏まえ、今後、日本がどうなっていくのか、未来を語り合いたいと思います。
急なお知らせですが、興味のあるかたは、中野市の「未来創庵」に、11日(木)、午後1時に、ご参集ください。
参加費は、1000円です。 1時から、5時を考えています。
希望者は、メールで、 nunato2511arai@gmail.com まで。
会場は、中野市西2-3-13です。 電話は、090-9370-5740 です。
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