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今日(5月4日)の日経新聞には、比較的大きな記事として「日中韓ASEAN会議」が取り上げられていた。http://www.nikkei.com/access/article/g=96959996889DE6E3E2E5E1EBEBE2E2E6E2E7E0E2E3E09797EAE2E2E2
3日の財務相・中央銀行総裁会議で、外貨融通網「チェンマイ・イニシアチブ」(CMI)の拡充を柱とする共同声明が採択され、独自の金融安全網を強化することで、欧州危機の波及回避に域内をあげて連携する姿勢を示した、とのこと。
その記事の内容で、少々驚いたのは、日本が独自枠の拡大に慎重姿勢を示しているということだ。その理由は、日本がIMFとの協調を重視し独自枠の急拡大には慎重姿勢をとっているという。つまり、米国の横顔を見ながら動いているということだ。
そもそも、この「チェンマイ・イニシアチブ」(CMI)は「宮沢構想」とも呼ばれ、1997年のアジア通貨危機を受けて当時の宮沢首相が提案したものだ(もともとのアイデアは当時の榊原財務官)。しかし、米国の強い反対で、当時は一旦つぶされてしまった。
しかし、日本は、米国に追随するばかりでなく、このような提案をもっと積極的に行っていくべきではないのか?
日本が、慎重であろうがなかろうが、このような動きはどんどん進んでいく。3月末にインドで行われたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会合では、新興国のインフラ整備などを支援する新銀行「BRICS銀行」を創設することが合意された。これはすでに昨年の会議で話し合われたことだが、今年になって踏み込んだ対応がなされることになった。
新興国や発展途上国の開発を支援する銀行は既にかなりある。例えば、世界銀行・国際復興開発銀行(IBRD)がそうだし、地域ごとにも米州開発銀行(IADB)、アジア開発銀行(ADB)、アフリカ開発銀行(ADB)や欧州向けにも欧州復興開発銀行(EBRD)がある。更に、それらの国の民間の投資を促進するために国際金融公社(IFC)や多数国間投資保証機関(MIGA)などもある。MIGAの初代長官は野村証券出身の寺澤義男氏だった。
しかし、それらの銀行・機関がしっかりと機能してこなかったことはよく話題として取り上げられる。スティグリッツ教授なども盛んに批判を繰り返している。
新興国サイドでも、IMFや世界銀行などの改革スピードが遅いという主張を行ってきている。IMFの前ストロスカーン専務理事がセクハラ事件で退任した後の専務理事選挙でも、新興国を代表するような人選が行われるべきという主張もなされた。
とはいっても中国は副専務理事(No2)のポジションを獲得するために現専務理事のラガルド氏を推すという取引をしたという。これで、中国は、次回のSDRの再計算で人民元を構成通貨として入れることを狙っているだろう。
BRICSの5か国も一枚岩ではないので、事実、中国のプレゼンスが突出することに対する懸念は強い、簡単にBRICS銀行が出来るとは思わない。また、BRICS側もこれをうまく利用して、IMFや世銀などでの発言力を高めようという意図もあるに違いない。
しかし、チェンマイ・イニシアチブの構想が出された時は強く反対して米国が、今回は表立っては反対していない。
日本もそろそろ米国に追随するばかりでなく、新興国や開発途上国のためになるような提案をもっと積極的にしていくべきではないだろうか?
政府は23日、原子力発電所の再稼働がない場合の今夏の電力不足予測について検討する需給検証委員会の初会合を開いた、という。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120423/trd12042319240023-n1.htm
しかし、電力の需給が厳しいことは、去年から分かっていたことだ。その対策のために、既に5800億円もの予算が既に計上されている。
その予算は、国家戦略室に設置された「エネルギー・環境会議」によって策定された「エネルギー需給安定行動計画」に記載されているものだ。
その計画通りに行えば、今夏の供給不足は解決されるはずだったのではないか?
原発を再稼働しないのは「集団無理心中」などと脅すのではなく、予算も計上して対応策も決めたのであるから、何をやって何がまだ足りないのかをしっかりと検証して
解決策を立てて欲しいものです。今までの民主党のやり方からすると、非常に悲しいことに、具体的に事を進めているとは思えないのです。
昨年、菅政権の時に余剰電力があるのではないかと調査を行ったことがありました。結果的には、「すぐに使える」余剰電力はそれほどなかった、ということになってしまいました。
それもそうでしょう、自家発電設備などはたくさんあるのですが、電力会社が送電線をつながないなどと邪魔をして、今までは送電することが出来なかったりしたためです。また、設備が老朽化している場合もあったでしょう。しかし、1年もの時間があったわけですから、その間にできることはたくさんあったはずです。
いまからでも遅くはありません。出来ることはとにかくすべて行って、電力不足に備えて頂きたいものです。それとも、原発が稼働しなくても電力が賄えるということがわかってしまっては困るのでしょうか?
経済産業省が、医療介護やヘルスケア、新エネルギーなど将来有望な産業が、2020年までに約1000万人の雇用を生み出すとの試算をまとめた、という。http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0E2E2E19F8DE0E3E2E6E0E2E3E09F9FEAE2E2E2
農林水産省がまとめたならば農業も雇用を生み出す産業として報告されていたことだろう。
輸出主導から内需主導の成長路線に切り換えなければならない、ということが叫ばれてから久しい。それが言われるたびにこれらの産業が成長が期待される産業としてあげられてきたのではなかったか?
しかし、残念なことに、言われたような結果にはなっていない。それは、これらの産業が規制産業であるからだ。福島第一原発事故で明るみに出てきた電力、バブル崩壊とその後のデフレの原因となった銀行、あるいは放送・通信などと同様に様々な規制で業界は保護されており、業界の反対があって規制緩和は進んでいない。TPPの議論でも感情的な議論ばかりで、全く進まないが、規制緩和についての賛成・反対の議論もこのTPPの賛成・反対と同じような議論となっている。
今回の報告書を作成した経済産業省にしても、福島第一原発事故から分かったように、その視線は業界に向いているのであって、決して国民には向いていない。
つまり、業界の利益に反することは行わないということだろう。であれば、次に予想されることは、産業育成のためにということで、新たな予算を請求するということだろう。
今まで何度も同じようなことが繰り返されているはずで、それを実現しようとするならば、規制緩和などを行うことで、利権構造にメスを入れなければならないだろう。
江田憲司氏の『財務省のマインドコントロール』に、本の主たる内容からは若干外れるかもしれないが、非常に興味深い内容が書かれていた。
それは「米国債の償還金15兆円をなぜ使わない?」という項に書かれていることで、1997年6月のデンバーサミット後に、橋本総理がニューヨークに立ち寄った際に行った講演の質疑応答に関わるものだ。講演内容の詳細は後段で記載しますが、「何回か、財務省証券を大幅に売りたいという誘惑にかられたことがある」という橋本総理の「有名」な発言についてです。
この発言を受けて、NYSEの株価は192ドルと、ブラックマンデー以降の最大の下げを記録して、市場に大きな混乱をもたらしました。当時は、「橋本総理は経済音痴」という批判を呼びました。
私も文字通りそのように受け止めていたのですが、実は、周到に準備をしたうえでの発言であったというのです。
江田氏は、当時、橋本総理の政務担当秘書官として立ち会っていたそうで、当時の自身の日記なども紹介しています。その橋本総理の発言は、旧知の財務官経験者との打ち合わせの上で意図的に行ったもので、講演の冒頭で、「金融関係者はいないでしょうね」と冗談めかして言ったのも、相当インパクトのある発言であることがわかっていたからだそうです。
日本の外貨準備は積み上がるばかりで、現在の残高は本年3月末で1兆2900億ドルに達しています。本来の目的からすればこのように巨額の外貨準備など必要ないはずで、必要以上に積み上がったものについてはタイミングを見ながら、適正な水準に調整する必要があるはずです。しかし、今までそのようなことは一切行われてきませんでした。それは、外貨準備が増加することで入ってきた資金で米国債を購入すること自体が目的化してしまったからで、それを減らすという考え自体が否定されてきたからでしょう。
昨年も安住大臣の下で、大きな為替介入が行われましたが、今や為替の市場介入自体が全く意味を成しません。一時的には対ドルでの円安方向へ動かすことは出来ても、時間の経過とともにすぐに戻ってしまいます。円高の原因を「投機的な動き」として、ヘッジファンドなどを批判するのですが、今や、日本政府が為替介入すること自体が、ヘッジファンドに「確実に儲ける機会」を与えてしまっています。今現在では、外貨準備は40%程度の含み資産を抱えているとみられています。つまり40兆円あまりが為替介入によって失われているわけです。
外貨準備の本来の目的やあり方を今一度見直す必要があるでしょう。
そのなかで、時々の政治状況によっても異なるわけですが、今回紹介されているように、少なくとも、公式ではないようですが、「意図的に外貨準備について米国に対してメッセージを送った」ことがあるということが分かったことは、大変興味深いことだと思います。中国のように、日本も、米国ともっと突っ込んだ本音ベースの話をできるようになってほしいものです。
以下、同著のなかから当時の橋本発言を転記させていただきます。
「ここに連邦準備制度理事会やニューヨーク連銀の関係者はいないでしょうね。実は何回か、財務省証券(米国債)を大幅に売りたいという誘惑にかられたことがある。ミッキー・カンター(元米通商代表)とやりあった時や、米国のみなさんが国際基軸通貨としての価値にあまり関心がなかった時だ。(財務省証券を保有することは)確かに資金の面では得な選択ではない。むしろ、証券を売却し、金による外貨準備をする選択もあった。
しかし、仮に日本政府が一度に放出したら、米国経済への影響は大きなものにならないか。財務省証券で外貨を準備している国がいくつかある。それらの国々が、相対的にドルが下落しても保有し続けているので、米国経済は支えられている部分があった。
これが意外に認識されていない。我々が財務省証券を売って金に切り換える誘惑に負けないよう、アメリカからも為替の安定を保つための協力をしていただきたい。」
最近は、気分が落ち込むようなニュースが多いのですが、AIJ投資顧問による「年金運用資産2000億円大半消失」というニュースは非常にショッキングなニュースです。
AIJ投資顧問は独立系の投資顧問会社だそうですが、同社の中心顧客は国内の企業年金で、運用受託資産は2000億円余りで、その大部分が消失しているといいます。顧客は企業年金でも、その中心は同業種の企業などが集まって作る「総合型」の厚生年金とのこと。しかも、運用受託した企業年金の数は100余りに達するとのこと。
企業年金が置かれている危機的状況
企業年金の資産運用は1990年のバブル崩壊以降深刻になり(ということは既に20年以上経過しているわけですが)、2000年以降は「代行返上」という言葉が大きく取り上げられ、年金制度改革及び資産運用改革について様々な議論が行われてきました。
その過程で、大企業などが運営する当時「単独・連合型」と言われた企業年金は、(JALや東京電力などを除いて)掛け金の引き上げや給付金の引き下げなどを含む制度改革及び運用目標の見直しなどを含めた資産運用改革を行ってきました。(残念ながら、だからと言って状況が大きく改善したということではありません。)
今回被害にあった総合型企業年金は、その母体が中小企業が中心であることから、掛け金の引き上げ・給付金の引き下げなどの改革は企業年金そのものを存続させるかどうかという議論につながるために、企業年金内部でも本格的な議論や改革が行われずに来てしまいました。総合型の企業年金の常務理事や事務長はほとんどが社会保険庁からの天下りで、企業年金をなくす方向での話(失業することになりますので)はしたがりません。
2000年以降、大手企業が運営する単独・連合型の企業年金は、年金資産の保証利回りをそれまでの5.5%から大きく引き下げてきましたが、総合型はずっと従来の5.5%を維持してきました。しかし、株式市場の低迷などで、5.5%の運用収益は確保できていませんので、ますます積み立て状況は悪化していました。
制度変更が出来ないわけですから、運用収益を稼がないことには、積み立て不足(一般企業でいえば「債務超過」状態)はさらに悪化します。実際、75%程度の企業年金(主として総合型)が積み立て不足となり、厚生労働省から改善要請が出されていた企業年金も多数でていました。
その為に、藁をもつかむような気持ちで、高い収益性をうたう、あるいは(株式市場が低迷を続けていましたので)どのような市場環境でも一定の収益(高収益でなくても)をあげる投資顧問会社への運用受託に走ってしまったというわけです。
AIJ投資顧問という名前自体今回初めて耳にしました。同社は日本証券投資顧問業協会に加盟していますが、会社の概要や運用受託資産の内容については全く報告していませんでした。そのような会社に120以上もの企業年金が運用委託をしていたということは、年金の制度あるいは年金資産運用の置かれている環境がそれほど深刻であることを表しているでしょう。
何故、長期間に亘って気づかれなかったのか?という疑問
何故、運用受託資産が消えてしまったのかは、今後解明されていくことを期待しますが、現時点で、疑問を感じるのは、何故、このような状態になるまで誰にも気づかれなかったのか?ということです。
運用を委託した企業年金には毎月、運用を受託した投資顧問会社から運用状況報告書が提出されています。AIJ投資顧問の場合には、この運用状況報告書が長期間にわたって粉飾が行われていたのでしょう。しかし、年金資産そのものは信託銀行が受託・管理を行っており、投資顧問会社が預かっているわけではありませんので、勝手に流用することも、その資産の運用状況の粉飾は簡単には出来ません。
また、信託銀行からも毎月、資産管理報告書が企業年金に提出されています。通常であれば、企業年金から厚生労働省や年金に加入している会社(事業所)への報告は、この信託銀行が報告している数値がもとになっています。
とすれば、信託銀行は一体何をやっていたのでしょうか?120以上の企業年金がAIJ投資顧問に運用受託していたとすれば、ほとんどの信託銀行がAIJ投資顧問の資産運用管理にかかわっていたはずです。
今回のケースでは、海外のオフショア(例えばケイマン)などで設立したファンドを購入するという形態がとられていたとのこと。ファンドは、AIJ投資顧問が、そのファンドの純資産価額を計算する海外の銀行と結託して実態とは異なる価格を出していたとすると、日本の信託銀行でもわからない、ということになります。
さらに今回の事件で噂されているのは、AIJ投資顧問は、実態的には同じビルに入っているグループ会社のアイティーエム証券と共謀していた可能性が高いらしい、ということです。同社についての記載はまた別の機会にしたいと思いますが、いい情報は何一つ出てきません。
今回の事件が、運用を行った結果として(その運用の失敗によって)運用資産が失われたのか?あるいは、当初から運用会社ばかりか証券会社や海外の銀行などが意図的に運用資産をどこかに流したのか?早期の解明が待たれるところです。
企業年金だけでなく基礎年金である厚生年金も同じ問題を抱えている
今回は新聞にも「企業年金」という文字が、意図的にかもしれませんが、目に留まります。しかし、この制度改革と資産運用改革の問題は、先にも記しましたが、もう20年以上も前から叫ばれてきている問題ですが、根本的な問題解決は全くなされていません。
日本の年金制度は修正積立制度というある意味特殊な形態です。現在積み立てられている資産をどのように運用していくかは、全体の制度がどのようになるかで全く変わってきます。例えば、従前のように5.5%の保証利回りを今後確保していく場合と、現在の経済成長率に合わせて1~2%を目標としていくのでは、取るべきリスクの水準が全く違ったものになります。また、既に始まってしまっているのですが、年金掛け金よりも年金給付金の方が多くなってくると、毎年、積み立てられた資産からの取り崩しを行わなければならないという状況になり、積立金の資産運用には様々な制約が課せられることになります。
「社会保障と税の一体改革」と言っておきながら、政府は年金の将来像などを明らかにしようとはしません。しかし、前述のように、将来像がどうなるかが明確にならないと、運営・管理の内容については決めることは出来ません。もっと言わせていただけるとすれば、「社会保障と税の一体改革」ではなくて、「経済と財政」という大きな枠組みについて検討しなければならないはずなのです。将来の全体像が示されないと、国民もどのような選択をすべきか判断することが出来ません。現在は、ただたた国民に「白紙の請求書」が突きつけられた状態なのです。
昨年12月26日に、北海道新幹線など未着工の3区間について、今年度中に同時着工する方針が確認された、という。
北海道新幹線では、「札幌延伸は投資効果が非常に高い事業」とされ、北海道経済連合会の試算によると、札幌延伸に伴う経済効果の純増額で年間1400億円、30年間の税収額累計が1兆5600億円が期待される、とのこと。
しかし、来年度の予算案では、税収が半分にも満たないという厳しい状況の中で、総事業費が3兆円にも上る整備新幹線事業が必要なのだろうか?
私が驚いたのは、北海道新幹線では、開業予定が35年度だということだ。今からすると20年以上も先の話だ。
本当に、建設会社ばかりでなく、地元に経済効果が期待されるのであれば、20年もかけることなく、もっと早く開業できるように、集中的に建設を進めるべきだ。
中国のように、安全性まで無視して、建設しろとまでは言わないが、中国のようなスピード感を持ってやらないと、経済効果も何もないのではないか?
東京札幌間が、現在8時間36分かかるものが、3時間半も短くなると言っているが、20年もたったころには、他の交通機関の状況や、地元の産業・経済あるいは人口などの状況も大きく変わってしまっている可能性が高い。
20年もかけて行う新幹線整備事業に、建設関係者を除く地元の人たちが本当に経済効果を期待しているとは思えない。
これではかつての自民党政権とやっていることは同じだし、民主党がマニフェストで訴えていたこととは正反対なのではないか?
新春のお慶びを申し上げます。
平素のご厚誼を厚く御礼申し上げます。新年も幸多き年でありますよう心よりお祈り申し上げます。
平成24年元旦
『日本は龍体列島』:<世界に向かってそのエネルギーを解き放て>
(みどりⅡから撮影した日本列島:JAXA)
古来、日本列島は龍体で、世界のひな形、と言われます。また、宇宙も相似形をしていると言われ、天(天体)、地(日本・世界)、人(胎児)、とみな同じ(丸い)形をしています。
龍には天を駆け巡る力(エネルギー)が与えられ、天(大気)、地、水を守るといわれ、また、そのエネルギーそのものが龍のかたちとなっています。
古来、日本そして日本人はこの龍(エネルギー)の精神性を持っていると言われるのですが、現状はどうでしょうか?
天を駆け巡るどころか、狭い列島に閉じこもるばかりです。グローバル化と叫ばれてずいぶん経ちますが、その間に日本・日本人は逆に中に閉じこもりがちになっているのではないでしょうか?
それと共にエネルギーもどんどん失われ、無いに等しい状況となっているように思われます。
「呼吸」という言葉に象徴されますが、まずは息を吐かないと(「呼」)、息を「吸」うことは出来ません。
私たちは、この龍体の日本を、そして龍体としての経験と知恵を、外にもっと提供していかなければなりません。
それによって、世界の国々そしてその人々と、共振することが出来るようになるのではないでしょうか?
室伏 昭昌
経済産業省が、消費15兆円を創出するための提言をまとめたという。
2020年までに国内消費15兆円、雇用390万人の創出を目指す経済ビジョンで、医療・子育て、エネルギー、農業・食品などを重点産業と位置付け、規制緩和や税制優遇を実施して産業空洞化に歯止めをかける狙い。
似たような提案はこれまでどれほど出されてきたのだろうか?重点産業と位置付けられているのは、どれも規制産業ばかりだ。TPPの議論でも明らかなように、規制緩和など行う気が無いのは見え見えだ。
予算編成のシーズンでもあるので、取り合えす予算確保のためのポーズとして出したのではないだろうか?
官僚の目は国民や日本のためというような方向には向いていない。「年金減額」という言葉が新聞紙面に載るようになった。今までは出ても極めて小さな扱いだったが、政策仕分けでも取り上げられた問題だ。
これは過去の物価下落時に支給額を下げなかったために払い過ぎになっている「特例水準」を本来水準に戻す目的で年金を減額するというもので、いわゆる「物価スライド」と言われるものだ。
本来、公的年金では、物価スライドを適用することになっているのだが、ここ10年以上にわたって、適用されておらず、このために7兆円余りが払い過ぎの状態となっている。http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819691E0E6E2E29A8DE0E6E3E3E0E2E3E39C9CEAE2E2E2;at=ALL
「年金減額」といっても、これはあくまでも政権与党が国民の支持が低下することを恐れて、本来行わなければならない物価スライドという時々の「微調整」を行わなかったがために、払い過ぎになっているというものだ。しかし、「年金減額」というのであれば、もっと本質的な、年金の給付額そのものが適正な金額であるかどうかを議論しなければならないはずだ。
野田首相は、増税を行うための方便として「次世代にツケを先送りしない」というようなことを言っている。しかし、この年金問題の方が問題はより深刻だし、実際問題として「世代間の負担」がきわめて偏った形になってしまっている。高齢者の方々には、大変申し訳ないのですが、現在の賦課方式を現状のまま維持することはもう不可能です。受給年齢をさらに遅くするということなども検討されていますが、それよりも前に、物価スライドというような「微調整」ではなく、もっと根本的な「世代間の負担」についての見直しをするべきではないかと思います。
年金関係については、以前のブログももしよろしければご覧ください。
→→「年金支給開始年齢引き上げ先送りへ:しかし、そもそも論として、約束が違いすぎるのでは?」
11月22日の日経によれば、またぞろ公的資金を使った「円高対策論」が出てきているようだ。
http://www.nikkei.com/access/article/g=9695999693819481E0E3E2E0E58DE0E3E3E3E0E2E3E39797E3E2E2E2
10月31日の大規模な介入にもかかわらず、円相場は元に戻ってしまい、76円/ドル台で高止まりしているため、「有効な円高対策を」との声はやまず、霞が関や日銀が神経をとがらせている、という。
そこで、与党内で、「年金積立金で外債を購入できるのではないか」という構想が浮かんでいる、という。厚生年金と国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産額は約120兆円。現在は国内債券での運用が中心だが、その一部を米国債など外国債券に振り向けるという内容だ。GPIFが米国債での運用比率を高めれば、それに伴って円売り・ドル買いの取引が発生して、結果的に円売り介入と同じ効果を生み、円高是正が期待できる、という。
しかし、何度も繰り返すが、たとえGPIFの資産120兆円を使ったとしても、時間がたてば、今回のようにまた元に戻ってしまうだろう。かつてとはちがい、世界の投資マネーの規模は大きいし、円高の根本的原因が解決しない限り市場介入など全く意味がない。
尚、ここで、GPIFという名前が出てくることも問題だ。GPIFは現在問題となっている国民の年金資金の運用管理を行っている組織だ。過去10年以上にわたる低金利と株式市場の低迷で、運用環境が厳しい中、その運用利回りも低迷している。また、近年は、年金給付の金額が増加して、毎年、資金は出超となっている。つまり、総資産は減少している。
しかし、今までもそうだったが、運用環境などが厳しいからといって、むやみにリスクを取った運用は行ってこなかった。その運用は、資産と負債の正確に照らし合わせて運用を行ってきている。
それらを全く無視して、お金があるところなら何でもよいといった感覚で、「円高対策」に利用しようというのは如何なものか?
以前は、GPIFではなく、常に郵貯・簡保の名前が挙がったものだ。既に、かなりの年月が経過して忘れてしまった方や、全くご存知ない方も多いとは思うが、1990年代初めに、バブル崩壊によって株価が下落した際に、その株価を支えるために株価維持政策(PKO:Price Keeping Operation)なるものが行われた。つまり、郵貯・簡保のお金を使って市場から株式を購入したのだ。
之には多額の資金が投入され、1990年代後半や2000年代に入ってから株価が下落した際も、再度同じことを行うべきだという意見も再三あがった。しかし、この政策は御語地に失敗して、郵貯・簡保では6兆円あまりの実損が発生した。機会損失等を考えれば、この2~3倍くらいの損と考えてもよいだろう。当時は、郵貯・簡保は国有であったわけで、その資金は国民のお金とも言えるし、預金者や保険者のお金ともいえる。
また、GPIF以外にも、日銀が50兆円余りの資金を使って外債を購入したらという案も別途出されている。50兆円といえば、日本の1年間の税収よりも大きな金額だ。既に外為特会では、1年分の税収に匹敵する40兆円の含み損があるのだが、やっても意味のない為替の市場介入に何故このような暴挙が行われているのだろうか?
金融問題といえば、すぐにロックフェラーやラスチャイルドの名前を挙げて、ユダヤの陰謀論が叫ばれることが多いのだが、陰謀でも何でもなく、日本人が、自らの資産を食いつぶそうとしている。国際陰謀論でも何でもない、ただの国内問題だ。無為無策の政治家や官僚によって、国民の大事な資産が食いつぶされようとしている。
円相場が徐々に水準を切り上げ始めた。安住財務大臣が、「市場がどう思おうと、私としては納得いくまで介入する」と述べて、大規模介入を行ってから半月余りが経過した。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111031/k10013620641000.html
以前から何度となく書いてきたが、為替の市場介入は、全く効果がない。そもそも、市場環境が20年、30年前とは全く異なっている。今回にしても、安住財務大臣が「市場の投機的な動きに対しては断固たる措置を取る」と発言してきたが、円高というよりも他通貨が弱くなっているもので、市場介入を行っても、円高の原因となっている根本的な原因を解決できるわけでも何でもない。
また、今回の介入にあたっての安住財務大臣の発言で、財務省・日銀が目標としている水準が透けて見えてしまったために、円安になった場合には、買い方は安心して買っていけることになってしまった。安住大臣が言及した投機筋を設けさせるために市場介入を行っているようなものだ。
これも何回も書いているが、日本の外為特別会計は、既に保有資産の40%程度、つまり40兆円近い含み損益を抱えている。これは日本の1年間の税収に相当する。
介入によって積み上がったドル資産を、いずれかのタイミングで円に戻して、介入資金の原資となった政府短期証券による借入(つまり借金をして介入を行っている)を返済することが出来ればよいが、日本はそれをしたことがないし、「その選択肢はない」。それは、そのドル資産は、米国債の購入に宛てられ、一旦買ったら、それを売って資金を回収するということは米国との関係上できないからだ。
これは、福島原発事故以降に大きく取り上げられるようになった原子力政策と同じように「トイレのないマンション」、表現が良くないので言い換えれば「出口のないマンション」と言ったところだ。つまり、外為特別会計は、増えこそすれ、減少するということがないわけだ。このままでは、外為特別会計がとんでもない含み損を抱えてしまう可能性が高くなる。既に40兆円の評価損があるのだが、これ以上増えたらどうなるのだろうか?
東京大学大学院経済学研究科の伊藤正直教授は13日に開催された国際シンポジウム「日本の啓示」で、「日本の現在の外貨準備は先進国と比較しても多すぎる、と警鐘を鳴らしている。http://j.people.com.cn/94476/7645504.html
年金の支給開始年齢を68歳から70歳くらいに引き上げるという議論が起こっていたが、とりあえず先送りとなったようだ。http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111027/plc11102700090000-n1.htm
その議論と並行して、希望する従業員には65歳まで雇用する義務を企業側に課そうという話が出てきていた。
しかし、これには違和感を感じざるを得ない。というのは、これまでの年金制度では、60歳まで働いたら、それ以降は年金だけで安心して老後を過ごせますよということが盛んに喧伝されて、年金制度が維持・発展されてきたからだ。それがいつの間にか、支給開始年齢に達するまでは働かなければならない、ということになっている。これでは将来の人生設計に関する考え方が根本から変わってきてしまう。もし、70歳まで支給開始年齢が引き上げられたら、70歳まで働かなければならない、ということになるのだろうか?
多分、年金の掛け金もずっと払わされることになるだろうから、男性の場合であれば、平均寿命からすると、50年近く年金の掛け金を払って、受給できるのは10年に満たない、ということになる。一体、この年金制度というのは、誰のための制度なのだろうか?
厚生年金基金や共済年金制度がつくられたのは、公務員の天下り先を確保するためだった、という話を旧厚生省の官僚から聞いたことがある。厚生年金基金でいえば、一番多い時で、2000近い基金が設立されていた。その運営は、理事長、常務理事、事務長などと事務員若干名ということが多い。そのうち、常務理事と事務省は社会保険庁からの天下りがほとんどだ。規模が大きな基金では、常務理事は旧厚生省からの天下りポストになっているところもある。そもそも、設立の認可を出す際に、旧厚生省や社会保険庁から何人という数が決められ、その給与までいくらということが指示されることも多かったそうだ。
80年代以降は、年金と福祉が「車の両輪」と呼ばれ、年金基金が、福祉施設を多額の費用をかけて盛んに建設した。しかし、結局は、バブルが崩壊して、それらの施設は価値が急減したばかりでなく、利用者も増えない中で、赤字を垂れ流し、年金積立金がそれらの赤字の補てんに使われるということになってしまった。
本論からそれてしまったが、年金制度は既に制度疲労を起こしている。抜本的な改革が必要だろう。具体的には、現在の賦課方式について徹底的に議論する必要があるだろう。通常、家計が厳しい場合には、出るお金を何とか減らすことから入って、また、同時に、副業などで何とか少しでも収入を増やそうということが行われるだろう。しかし、現在の年金制度では、通常であれば、真っ先に行われるであろう「出るお金を減らそうという努力」は全く行われていない。それは「給付金額の見直し」のことだが、本来、制度で定められて行われるべきインフレ調整さえ行われていない。そのため、過去10年近くで5兆円以上が余分に支払われている。これは少なくない金額だ。
民主党政権が誕生した時には、いわゆる「埋蔵金」や「人件費削減」などでかなりの財源をねん出すると言っていたが、全く何も行っておらず、結局足りない足りないで、その分をすべて増税で賄おうとしている。この年金制度でも全く同じだ。このようなやり方ではいくらお金を集めても、穴の開いたバケツに水を入れるようなもので、いくらあっても足りない。
リーマン・ショックを受けた緊急経済対策として2008年度と09年度の国の補正予算で設立された各都道府県の基金を会計検査院が調べたところ、10年度末時点で総額約3兆4000億円の41.4%しか使われず、約2兆円も残っていた、という。この調査の対象となった基金の設立は自民党政権下だが、緊急経済対策などを実施する際の構造的な問題点として今後も点検が必要だ、としている。http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819691E3E5E2E2E58DE3E5E3E2E0E2E3E39C9CEAE2E2E2
これは、地方自治体のニーズを点検せず、国主導で予算を編成した点に問題がある。また、安易に基金を多用した面もあるという。通常、国や地方自治体の予算は単年度で消化するルールに縛られるが、基金を使えば事業実施は複数年度にわたることを認められるため、急を要しない予算が多く計上された、というのだ。これだと、役所の権限や縄張りだけを広げる悪弊を招きやすい。
しかし、2兆円は小さな金額ではない。民主党は、政権を取ってから、それまで声高に叫んでいた「埋蔵金」による歳入捻出と、無駄な予算の削減を全く行っていない。すいかし、このようなニュースに触れると、まだまだやることがありそうな気がしてくるのだが・・・増税するという10兆円くらい簡単にできてそうな気がするのは私だけだろうか?
最近のネット情報で気になっていることですが、金額(数値)のあまりの大きさに驚かされることがあります。
天皇家が李家に預けていた16京円を日本に戻して復興資金として使用するというもので、そのうち8京円が米国に渡されるという話があります。いわゆる「天皇の金塊」に関わるものです。しかし、この数字はあまりにも大きくないでしょうか?
以下、この数値に関して、記載させていただきますので、ご参照ください。
「16京円」という金額が出ていますが、よく読むと「16京円相当の金塊」です。
この16京円という数字は、2009年の数値でいえば、世界のGDPの合計値が58068(10億ドル)つまり75円/$で計算すると4350兆円です。
16京円というのは世界のGDPの合計値の37年分です。
また、金塊として考えた時に、4000円/gで計算すると、4000万トンになります。
この4000万トンというのは比重を考慮すると200万m3です。金の価格が上がってこの数字ですので、1年くらい前であれば300万m3という具合にとんでもない数値になります。
現在の金の地上在庫は(これが正しくないことは明らかですが)、165600トンですので、4000万トンということになると、その240倍です。
尚、現在の世界の産出量は、2440トン/年ですから、4000万トンは、16400年分です。
16京円でも、8京円でも、あるいは1京円でも大変な金額です。もし、それらが使えるのならば、今の世界の金融問題は(数字上は)解決するでしょう。にもかかわらず、それと同時に、世界の危機を煽るような情報を流すというのは、どうしてなのでしょうか?
年金のもらい過ぎが、6年間で15兆円にも上るという。http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0EAE2E0978DE0EAE3E2E0E2E3E39797EAE2E2E2
先にも物価スライドが行われていないことで、5兆円以上が過大に支払われているということが報じられていた。しかし、今回のニュースは、それよりもさらに制度の根本的な問題だ。
自公政権は04年改革で所得代替率を毎年度、小刻みに切り下げ、23年度以降は50.2%に固定すると決めた。それは、年金財政の長期安定性を高めるねらいがあり、2100年ごろまで50.2%を保つと厚生労働省は試算した。それが坂口力厚労相(当時)らが「百年安心」と名づけた経緯だった。しかし、問題は、実際の支給水準が本来水準を下回ってから、04年の改革で導入した所得代替率を下げる制度を発動すると決めている点にある。政治的な理由から、先の物価スライドは、特例法によって行われていない。そのため、所得代替率を引き下げるという制度自体が発動されずに来てしまったことだ。そのために、物価スライドと所得代替率の両方が引き下げられずに、6年間で15兆円も過大に支払われてしまっているのだ。
6年間で15兆円というのは、今回の10年間で10兆円という増税額よりも大きな金額だ。このままで行ったら、今後の増税と同じ期間に、いったいどれだけ過大な給付金額が支払われることになるのだろうか?今後10年間で30兆円くらいの金額に入ってしまいそうだ。
年金制度が出来てから、政治的な理由で、支給額ばかりはどんどん引き上げられてきた。しかし、現在の賦課制度では、もはやそのような水準を維持することが出来ないのは自明だ。
将来世代にツケを回さないようにしようとするならば、一時的な復興資金の為に増税を行うのではなく、賦課制度で運営される年金制度こそが給付と負担のバランスについて議論しなければならないのではないか?
関連する内容は、以下をご参照ください:
10月9日 年金支給開始年齢 引き上げ検討へ:それよりもまずは給付額削減や物価スライドの厳格な適用をhttp://www.k2o.co.jp/blog/2011/10/post-38.php
10月2日 年金減額見送り額5.1兆円:「次世代にツケを回すな」ではなかったのか?http://www.k2o.co.jp/blog/2011/10/51.php
政府が28日開いた国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)で、民間議員の岩田一政日本経済研究センター理事長が、政府・日銀が海外の国債を購入できる50兆円規模の基金を創設すべきだと提言した。外債購入に伴う円売りで過度な円高を防ぐとともに、財政不安に直面する欧州の国債を買い支え、市場の安定につながるとした。http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E0EAE2E0878DE0EAE3E2E0E2E3E39797E0E2E2E2;av=ALL
よくわからないのだが、外為特会というものがありながら、なぜまたここで新しい基金を作らなければならないのだろうか?また、外債を購入することで、円高の流れを変えることが出来るのだろうか?また、円高を阻止したいのか?あるいは(欧州の国債を買うことによる)市場の安定が目的なのか?よくわからない。
外為特会を通じての市場介入の効果が全くないことはすでに明らかになっている。そしてまた、現在のようにじりじりと円高になるようなケースでは、「過度な変動」ということにもならず、市場介入に対する他国の理解は得られないだろう。だから、全く別の器を作って、外債購入をやろうというのだろうか?さらにわからないのは、(a)ただ単に外債を購入することで円高を阻止できるのか?(今までの市場介入は機能していないが…)(b)50兆円だけで足りるのか?(c)為替損が出たらどうするのか?(外為特会は既に40兆円余りの含み損を抱えている)(d)資金はどうやって調達するのか?(外為特会は市場から調達している(要は謝金で賄っている))これから更に国の謝金を50兆円増やすのか?
また、先に政府が発表している円高対策にも疑問を持つことがある。日本企業に資金を融資して、海外企業のM&Aを支援するという対策が発表されている。しかし、これだと、日本企業が海外での生産ないしは事業活動をますます加速化することにならないだろうか?そうすると国内の雇用はますます失われることになり、何のための円高対策なのかよくわからなくなる。そもそも「円高対策」とは国内の雇用を守るということが目的でなかったか?
政府の円高対策とは全く持ってちぐはぐだ。
欧州連合(EU)は約10時間にも及ぶマラソン交渉のすえ、欧州債務危機の「包括戦略」を取りまとめた。激しい議論の末、民間の負担をどのくらいにするかで最後までもめたのだが、結局、50%とすることで合意したのだ。EU・国際通貨基金(IMF)の報告書によれば、第2次支援で民間が60%負担するとEU・IMFの負担増はほとんどない。今回合意した民間負担50%だとEU・IMFも負担がある程度増える見通しで「痛み分け」の結果といえる。「もし民間側が自発的に同意しないのであれば、ギリシャが債務不履行(無秩序なデフォルト)に陥るシナリオに反対しない」というメルケル独首相の発言が「最後通牒」になったという。http://www.nikkei.com/news/headline/archive/article/g=96958A9C9381E2E2E3E2E2E3E18DE0E5E3E2E0E2E3E39C9CEAE2E2E2
とりあえず、今回の「包括戦略」によってギリシャ及びユーロの問題は当面の時間稼ぎができたようだ。米国の株式市場は、7~9月期のGDP値の発表の影響もあり、終値で前日比339ドル51セント(2.9%)高の1万2208ドル55セントと、約3カ月ぶりの水準を回復している。
ギリシャの問題だが、もともとは何年にもわたって同国が財政管理をしっかり行ってこず、また、国の競争力を高めることが出来ない中で、財政赤字を膨らませてきた結果であることは間違いない。しかし、今回の交渉過程で、民間側は負担を追うことにかなり抵抗したのだが、民間側には何も責任がないのだろうか?
ギリシャのケースでは、ゴールドマンサックスが同国の公的債務の数値を見かけ上引き下げる行為に手を貸して、巨額の報酬を得ていたことが既に報じられている。もちろん、法的に問題があるというわけではないかもしれないが、EU統計局の基準をわかったうえで、それが厳格化される前に取引(「クロス・カレンシー・スワップ」)が行われており、事実上の、「抜け穴」を用意するような行為であったことは間違いないだろう。(ただし、これはギリシャだけでなく、他の国でも行われたことのようだ。)見方はいろいろあるだろうが、極論すると、粉飾決算に手を貸すような行為ともいえる。ゴールドマンサックスの人間が、それがどのように使われるか、公的債務の数値にどのような影響を与えるのか「全く知らなかった」と言い切れるのだろうか?
これは極端な例としても、ギリシャの公的債務が膨らんでいたことは民間銀行側も当然わかっていながら、資金を提供し続けていたのであるから、今回の危機に際して、何も責任がないということがあるのだろうか?
今回のギリシャ危機でも、結局はギリシャというよりも、民間の銀行の問題に行き着く。民間銀行の資本の積み増しなども決まったのだが、米国に端を発したサブプライムローン問題以降、世界の銀行には、巨額の公的資金が投入された。公的資金というのはとりもなおさず国民の「税金」だ。『国家対巨大銀行』(サイモン・ジョンソン/ジェームズ・クワック共著)に詳しいが、今までにこれだけ多くの資金が、1つの産業に注入されたことはあるのだろうか?しかも、民間銀行は、この20年以上にわたって、規制改革を求めてきて、政府による規制や監督は無いほうが良いのだ、と主張し続けてきたのだ。
サブプライムローン問題以降の金融危機はまだ終息したわけではないが、救済され、生き残った銀行はさらに大きくなって、以前のように収益を上げるようになっている。しかし、金融危機を引き起こした責任を取った経営者は誰もいないし、金融システムそのものも何も変わっていない。
このままでは、儲けたお金はすべて民間銀行(その社員)が手にして、損はすべて国民の税金ということになってしまう。最後は、国(国民)が尻拭いしてくれるとわかっていれば、銀行はどんどんリスクを取って利益追求にまい進するばかりだろう。金融システムの改革が必要なのではないか?
安住淳財務相が、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、不良債権処理に手間取った日本の「教訓」を踏まえ、欧州は「大きなスキーム」で金融機関の支援を進めるべきとの考えを表明することを明らかにした、という。http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-23625320111014
これは、日本で不良債権処理を行った際に「過少な見積りが解決を遅らせた苦い経験がある」というもので、かつて、麻生氏も国際会議で同様の発言をしたこともあるのだが、ある意味、日本の政府及び財務省・日本銀行の誤りを認めたものだ。
欧州の金融当局者に上から目線でもの申すようで、先方からすれば非常に不愉快な発言だろう。というのも、日本の金融問題がすべて解決しているわけではなく(既に失われた20年となっており、このままでは30年となってしまう)、個々の金融機関もさることながら、国の債務残高などを見れば、はるかに欧州の方が状況は良い。また、今回問題となっている銀行の厳格査定の問題も、日本の銀行が厳格に査定されているかどうか、今現在でも、疑わしい。
既に失われた20年という状況なのだが、この元凶となったのが、安住財務相が認めた「不良債権の教訓」であるとすれば、日本の国民にもしっかりと日本の金融当局者の誤りを説明及び謝罪をすべきだろう。
また、日本の銀行について言えば、かつてと中身はまるで変っていない。それは、この20年の間に「大きくて潰せない」という考えを、植え付けてしまったためだ。もうけはすべて自分たちのものにして、後始末は国民に押し付けるということが、続いている。日本の銀行は90年代中頃からほとんど税金を払っていない。2012年度から納税を開始するというニュースが今年に入ってから出ていたのだが、ここにきての金融危機の影響などで、また遅れるかもしれない。
通常、経営が厳しくなれば、従業員の削減や給与・賞与の削減、先のルネサスのように、などが行われるのだが、銀行員の給与が大きく減ったということなど聞いたことがない。
日本の金融当局者が、本当に、「不良債権の教訓」ということを認識しているのであれば、日本の金融機関をどのようにするのかということを本気になって考えてもらいたい。
中国の温州で民間貸出の資金ショートが続発して、信用保証会社や銀行を巻き込んだ倒産の連鎖が深刻化している、という。http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1011&f=business_1011_218.shtml
温州と言えば、最近は、温州人による中国国内各地での地上げが問題になってきた。
温州人のことを、中国人は、中国のユダヤ人といってきた。かつて、毛沢東は、温州人のことを、一番嫌いだった。どれだけ毛沢東が吹き込んでも、聞いたふりだけして、全く理解しようとしなかったからだ。実は、自分でものを作ればよいという考えをする人たちで、そのため自営業者が一番多かった。また、リスクをとるということが出来る人たちでもあった。その人たちが、最近は、中国全土の株や不動産の地上げのご指南役になってしまった。それでも、昔からのものづくりに励む人たちも多くいたのだが、それらの会社で資金ショートが続発し、企業の資金繰り悪化で社長の逃亡や自殺が相次ぎ、信用保証会社や銀行を巻き込んだ倒産の連鎖が深刻化している、というのだ。
中国国内では、金融引き締めが行われる中で、民間企業へ貸出が減少し、資金繰りの為に高利の闇金融に手を出す会社が多くなってきて問題となっている。全体の貸出額をそれほど大きく絞っているわけではないのだが、国有企業に優先的に資金を回すために、民間企業への資金が限られてしまうのだ。
しかし、毛沢東が嫌い、中国のユダヤ人と言われる温州人だけあって、ここへきて「転んでもただでは起きない」という動きが出てきた。「金融危機を逆手に金融特区構想」を国に申請するというのだ。規制を緩和・撤廃することで、サービス業への資金投資を促したり、民営中小金融機関の市場参入を大幅に認め、企業に多様な資金調達ルートを準備する、というものだ。http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1013&f=business_1013_018.shtml
大震災が起こっても従来からの利権維持に汲々としている日本の政治家・官僚と比べて、なんと中国の動きの速いことか!!
明治維新と戦後の変革と成長を20年余りで達成してしまった中国ならではの動きと一言で片づけてしまうのは簡単だが、考え方がダイナミックで柔軟だ。日本と中国・・・どちらが社会主義の国だかわからないような状況になっている。
米国企業に中国撤退の動きが出てきたという。http://j.people.com.cn/94476/7613532.html
これは、「メードインUSA」のコスト的優位性に対する認識が広がり、生産を中国から米国に移す動きが出てきたというものだ。
確かに、中国国内の人件費の高騰などで、以前のように、中国での生産が「とにかく安い」という状況ではなくなってきている。中国企業でも、かつての米国や日本のように、海外に生産拠点を移す動きが出てきている。隣のベトナムもそうだし、バングラデシュやミャンマーなどもその候補地となっている。もともと東南アジアなどでは華人がその経済の中枢を担っていることもあり、中国企業が進出するのは、日本企業などが進出するよりも容易だ。
最近は、フォードが1万2千人分の雇用をメキシコと中国から米国に移すことを発表した、という。グローバル化が進む中では当然の動きで、それぞれの企業が、その戦略に従って、どこで生産を行うべきかを決定していくので、グローバル化の中では、一律に、中国が良いとか、米国が良いとかと言った、二者択一の動きではない、はずだ。
米国では、オバマ大統領は5年間で輸出を倍増するという計画を発表している。それによって、200万の雇用を創出するとしてきた。また、成長戦略の一環として、再生可能エネルギーの育成が叫ばれたりもしてきた。しかし、これは、最近になって、うまくいっていないことが報じられている。
来年の大統領選挙に向かって、米国はいよいよ政治の年になる。今回のニュースはボストン・コンサルティングの調査に基づくものだが、この調査では、今回の動きによって、米国内で200万から300万の雇用が生まれる見込みだ、としている。オバマ大統領が掲げる200万の雇用創出の数字と図らず一致する。
最近、米議会で対中国為替制裁法案の審議が行われるなど、米国の中国に対する人民元切り上げ圧力が高まっている。法案は成立しないようだが、成立させることが目的ではなく、あくまでも中国に揺さぶりをかけることが目的で行われている可能性が高い。(尚、今回のニュースを人民網が発信していることからして、米国の人民元の切り上げへの圧力を緩和しようという中国政府の意図も考えられる。)
今回のボストン・コンサルティングの調査がそうだとは言わないが、選挙の年に向けて、政権に有利になるような情報を流そうという動きが活発化する可能性が高い。
先日の民主・大久保政調副会長の発言(「外貨準備の運用先を新興国通貨などに広げるべき」というもの)に関連して、野田首相の以前の国会答弁が紹介されていた。それは「中国の外貨準備が日本国債を買えるのに、日本の外貨準備では中国国債を買えないことに不自然さを感じる」と述べ、規制見直しを求めたものだった。http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a85I0_PKTFcA
それに反応したのかもしれないが、人民網が「人民元の国際化 日本が警戒」という記事を掲載している。http://j.people.com.cn/94476/7613559.html
その記事では、「人民元は、すでに通貨の国際化を判断する「貿易決済、投資、外貨準備」という3つの要素を備えている」。それに対して、「日本は世界でもっとも多くの債務を抱えている。そのため、投資家はいつでも円資産を売れる準備をしている」。「人民元が上昇しドルやユーロに取って代わることはないが、円の影響力を弱め、円を「3大基軸通貨」から押し出す可能性がある」と、余裕の発言を行っている。
記事にあるような日本のメディアが「人民元の国際化に対して日本が警戒している」といった報道を行っているようには見えないし、それどころか、日本のメディアはそのような「事態」を全く理解していないだろう。野田首相や大久保政調副会長も同様だろう。そうでなければ先のようなのんきな発言はしないはずだ。この記事は、中国が自身の力(政治力・経済力そして人民元)に自信を強め、日本を揶揄するようなものだ。
民主党政権が誕生した時に、鳩山氏が「東アジア共同体」構想を発表した。その際に、中国は特段の反応をしなかった。当然、腹の中では嘲笑っていただろう。「何をバカなことを言っている・・・日本にはもうそんな力はない・・・東アジアの中心は日本ではなく、中国なのだ」と。中国は、米国からの圧力を巧みにかわして、急激な元高をさけながらも、着々と人民元の国際化を図っている。(関連情報は次のリンクをご覧ください→「元の国際化を着実に進める中国と、あえて円の国際化をしようとしなかった日本」)次回のSDRの見直しでは、まず間違いなく人民元がSDRの構成通貨となるだろう。また、IMFの副専務理事(事実上のNo.2)は既に中国人だ。
鳩山氏は、東アジア共同体構想のなかで、EUROのような共通通貨もあげていたが、EUROのような基準を設けるとすれば、日本のように巨額の債務を抱える国、また成長率がこれほど低い国、は構成国からはじき出されてしまうだろう。日本人の意識は20年前のままで、いまや世界の姿は大きく変わっている。日本を本来リードすべき政治家の理解は、残念ながら、さらにひどい。
ご参考までに、人民網の記事を以下添付します:
「人民元の国際化 日本が警戒」
日本メディアはこのほど、人民元の国際化の動きを次々と報じている。報道によると、人民元建て貿易決済は拡張し続け、ますます多くの周辺国が人民元で決済するようになっている。米ドルが低下し続けているため、人民元建て決済に対する安心感が高まった。また、イギリスは人民元のオフショア市場を創設し、シンガポールも創設を計画するなど、人民元のオフショア取引が活発に行われるようになっている。さらに、欧州債務危機と米国の量的緩和策により、多くの国が人民元を政府の外貨準備通貨の一つと見るようになった。人民元は、すでに通貨の国際化を判断する「貿易決済、投資、外貨準備」という3つの要素を備えている。
報道は、人民元が急速に国際化しているのは、中国に巨額の外貨準備があるためだと見ている。中国の外貨準備高は3兆2000億ドルに達し、世界の外貨準備高の30%を占める。これが多くの人が人民元を買い増しする主な理由である。また、各主要通貨の動きはいまいちで、ドルの乱発と持続的な低下、ユーロ圏の債務危機も理由の一つだ。円は上がっているが、「上げられた」と言うべきで、日本は世界でもっとも多くの債務を抱えている。そのため、投資家はいつでも円資産を売れる準備をしている。
日本の政府関係者が人民元の急速な国際化について公の場で発言したことはないが、財務省のある幹部は個人的に「日本政府は人民元の国際化の動きとその円の地位に及ぼす影響に非常に注目している」と述べた。日本の学者と専門家は、人民元が上昇しドルやユーロに取って代わることはないが、円の影響力を弱め、円を「3大基軸通貨」から押し出す可能性があると見ている。世界では、ドル、ユーロ、元の協力メカニズムを構築し、国際通貨と金融体制を安定させるという構想も持ち上がっており、円の地位は徐々に低下している。さらに、ある学者の見方では、人民元が国際通貨になることは中国のソフトパワーとハードパワーが強まっていることを意味し、欧州が債務問題の解決で中国に助けを求めたことからも、中国の国際影響力が高まっていることがわかる。
(「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年10月11日)
民主党の大久保勉政調副会長が、日本の外貨準備の運用先について、中国・人民元や韓国ウォンなど新興国通貨にも拡大すべきだとの考えを示した、とのこと。「外貨準備の運用先をドルやユーロだけでなく、日本の貿易相手国である中国や韓国、タイなどの国債で運用すべきで・・・貿易の実態に応じてアジア通貨を持つのは自然だ」と語った、という。http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a85I0_PKTFcA
大久保氏といえば、京大経済学部卒で、東京銀行、モルガン・スタンレー証券で勤務しており、一般的には経済の専門家のはずだ。言っていることは、一見、さもさもらしい内容だが、多少、気になるところがある。
貿易実態に応じてというのだが、新興国通貨は、決済通貨としては一般的には認めれらていない、ましてや中国元はまだ管理通貨だ。
理想論ではなく、現実的な対応についての発言と思われるが、本来であれば、外貨準備の在り方そのものについても考えてほしい。現状、日本の外貨準備はそのほとんどが米ドルで、ユーロもあってないに等しい。それは、日本の為替政策は、対米ドルを中心に行われてきたからで、その結果として、日本は長きにわたって米国国債の最大の購入者だった。
橋本元総理が、「米国国債を売りたいという誘惑に駆られることがある」と発言して大問題になったことがあるが、いままでは外貨準備の運用そのものが、対米政策そのものであったはずだ。経済の教科書のように「貿易云々」というのであれば、これほど巨額の外貨準備など必要ない。
また、為替の市場介入は既に数十年行ってきているが、結果論でいえば、ほとんど効果がない。その結果として、外為特会は40%の含み損を抱えている。金額にすると40兆円を超えるような金額だ。日本の外貨準備は政府短期証券を発行して調達したもの、つまり借金をして調達したもの、であるが、それをただでさえリスクの高い為替の市場介入に使っている。その上、更に、リスクを取る必要があるのだろうか?
今回の発言が、単なるパフォーマンスでなく、本当の意味で、米国からの自立を考えていっているのであれば良いが・・・
厚生労働省は、年金の支給開始年齢について、急速に進む少子高齢化に対応するには、将来的に68歳から70歳程度へ引き上げることを視野に検討を進める必要があるとして、格的な議論を始める方針、だという。
前回の年金制度の見直しでは、自民党時代だったが、それで100年安心と言われたものだ。それが数年で、受給開始年齢の引き上げという議論にまで発展している。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111009/t10013143701000.html
年金問題では、少し前に、本来行われるべきだった「物価スライド」が政治的な理由から行われなかったばかりに、5兆円超の金額が多く支払われていた、という報道がなされていた。(関連記事は次をご覧ください→年金減額見送り額5.1兆円:「次世代にツケを回すな」ではなかったのか?)
そこでも書いたが、物価スライドは、その給付額問題の一部の問題でしかない。公的年金の給付額については、政治的な意味合いがあって、従来から、その支払額は大盤振る舞いがなされてきた。給付開始年齢云々の問題以前に、支払額についての議論を行うべきではないか?
物価スライドだけでも5兆円超の余分なお金が支払われている。更に大きな給付額の問題に切り込むことで、いったいどれだけの金額が節約できるのだろうか?
増税問題が大きな議論となっているが、年金問題もある意味税金と似た性格のものだ。そうであれば、歳入が構造的に減少してきているわけだし、これは近い将来劇的に増えることなど考えられないのであるから、政府予算と同様に姓出を削ることも考えなければならないのではないか?野田政権は、「次世代にツケを回さない」ということをよくいうが、この年金問題こそ「次世代つけ回し」の典型的な問題だ。
FRBの元幹部が「ドル安は政策手段の一部」であることを認めました。つまり、ドルがパニック的に売られたりしない限り、米政府はドル安基調を放置する公算が大きいということだ。残念ながら円高圧力は当面続きそうだ。http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE0EAE2E3918DE2E3E3E2E0E2E3E39494EAE2E2E2;at=ALL
今まで米国は公にはドル安政策をとっていることを認めることはありませんでした。しかし、事実上、ドル安政策をとってきていました。オバマ政権で財務長官を務めているガイトナー氏は、就任時に議会で、経常収支の改善策を聞かれ、為替政策を行うことを否定せずに、むしろ肯定する発言をしています。
ドル安の米国への影響ですが、オバマ大統領が政策として掲げているように、輸出を増やして貿易収支(ひいては経常収支)を改善することが期待出来ます。今年2011年の1~3月期に輸出は前年比で14.9%増とほぼオバマ大統領の輸出振興計画(5年で倍増)に沿ったペースで増加しています。
また、米国の債務(ここでは資本収支における海外から流入資金のこと)はドル建てなので、実はドル安が進んでも総額は変化しません。しかし、米国が海外に持つ債権(米国の場合は主として直接投資を行った結果としての資産)はドル以外の資産なので、資産は大きく増加することになります。この結果、米国の国際収支が大きく改善することが期待できます。
更に、ドル安による輸入物価上昇によって輸入が減少すれば同様の効果が期待できます。
時として米政府の高官から「強いドル」という言葉が出ることがありますが、これはあまりに急激なドル安は、米国からの資金流出が起こる恐れがあるので、スピードを調節するためにブレーキを踏んでいる、と考えたほうが良いでしょう。現大統領のオバマ氏も輸出振興策(5年で倍増)を打ち出していますが、その中心となるのはドル安であることは疑いようがありません。今回のFRB元幹部の話はそれを認めるものです。
日本政府は、為替の市場介入のための手当ても行っているようだが、今まで市場介入で効果は全くあがっていない。それどころか、その結果として外為特会は40兆円の評価損を抱えるという状況となっている。その上、米国が「ドル安は米国の戦略」と認めたのであれば、日本の市場介入など意味のないものとなってしまう。
野田政権が、大増税路線を突っ走っている。そのお題目は、次世代にツケを回すな、だ。
その為には、増税するばかりではなく、歳出を減らすことも同様に重要な事だ。また、官僚が自分たちの為に、ため込んでいる資金の復興という目的の為に、供出させることも重要だ。
そのような中で、野田政権が、増税以外の施策を行わないということを、示すようなニュースが流されていた。しかし、新聞の扱いは非常に小さいものだった。
10月1日の日経新聞に「年金減額見送り額5.1兆円」という記事が掲載されていた。
これは、公的年金で本来行われるべき「支給額のインフレ・スライド制」が、見送られてきたために、本来支払うべき金額よりも5.1兆円も多く支払われているというものだ。今後、このまま調整が行われないならば、単純計算すると今後10年で更に5兆円以上が余計に支出されることになる。http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819591E0EBE2E3E58DE0EBE2EBE0E2E3E39797E3E2E2E2
公的年金の給付額については、政治的な意味合いがあって、従来から、その支払額は大盤振る舞いがなされてきた。最近は、現在、現金を受給している高齢者と、それを負担している現役世代との間の世代間格差が問題となって、かねて議論が行われてきた。この年金問題は、野田政権が、まさに問題としている「次世代にツケを回すな」という問題の典型的な事例である。しかも、今回の「インフレ・スライド性」は、その給付額問題の一部の問題でしかない。しかし、その一部が積もり積もると5.1兆円という巨大な額となる。
これからの日本で、デフレが早急に収束してインフレが発生するとは考えにくいので、このままでは、これからの10年間で、少なくとも更に5兆円以上の支払い超過が発生することになる。それは、現在、増税の額について議論されているが、その額と比しても相当の比率になる。
野田政権が、本当に、「次世代にツケを回すな」ということであれば、今回のような問題については、もっと積極的に議論をして、メスを入れていかなければならないはずだ。そうでなければ、まさに嘘偽りの看板を掲げていることになるのだが・・・
安住淳財務相は30日朝の閣議後会見で、2011年度第3次補正予算で、為替介入の原資となる政府短期証券(FB)の発行限度額を15兆円引き上げるよう指示した、とのこと。これによって、今後の、為替介入の原資は現在の31兆円から46兆円と過去最大規模に膨らむことになる。http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPJAPAN-23429020110930
既に日本の外為特会の残高は円ベースで100兆円余りに達しており、報道されているように、40%余りの評価損が発生している。つまり、日本の1年分の税収全てが失われているに等しい。1971年のニクソンショック以来40年が経過して、その間に、日本は円高を阻止するために市場介入を繰り返してきたが、効果はほとんどなかった。360円だったものが、現状75円に近く、これが72円になると、数字の上では5分の1(5倍?)になった計算だ。意味のない市場介入を繰り返すことで、さらに評価損を膨らませようというのだろうか?
日本の外為特会は政府短期証券の発行によって、資金を調達することで成り立っている。つまり借金をして、市場介入をしているので、中国のように外貨が積み上がっている国とは根本的に状況が異なる。
円高は最近になって始まったことではない。既に40年も前に始まっていたことだ。最近は、円高が進んでも大企業はあまり声をあげなくなった。経営が大変なことは否定できないが、市場介入が無意味なことは十分理解したうえで、海外進出や、資金管理の高度化など様々な対応を取ってきている。問題は取り残されてしまった中小企業だろう。しかし、グローバル化が進む世界経済において、円が極端に円高に振れることは残念ながら考えにくい。円安に大きく振れる時は、日本そのものが大きく世界経済の中で埋没していくときで、むしろその方が日本にとっての打撃は大きいはずだ。
意味のない介入を繰り返すのではなく、政府のやるべきことは、企業、特に中小企業、が世界の成長を取り込んで、一緒に成長できるように後押しすることだろう。
先に、スイス国立銀行が、1ユーロ=1.20スイス・フラン以下に抑えるために、スイス・フラン売り・ユーロ買い介入の無制限実施を発表している。通常、下落(売り)圧力にさらされる通貨の防衛には十分な外貨準備が必要になるが、問題が通貨の上昇(買い)圧力である場合、そうした制限はなく、無制限に紙幣を刷ることになる。
本日の日経新聞に掲載された記事によれば、当初の量的目標水準(2000億スイス・フラン)を大きく上回る資金を供給している。5~9日の1日平均額は2534億スイス・フラン(22兆円)で、目標より27%も多い。
スイスの経済規模を見ると、GDPが2010年で、5224億ドル(約40兆円)で、国の予算(収入)が1840億ドル(約14兆円)となっており、非常におおざっぱに言ってしまえば、規模は日本の10分の1以下だ。(注)「予算」については各国ごとに基準が異なるが、スイスについてはCIAのWorld Factbookを参照した。
規模的には日本よりかなり小さなスイスが、日量で22兆円を上回るような供給を行っている。これは、GDPの55%にも上る。日本に当てはめてみると大雑把に言うと275兆円にもなる。発表では、市場に放出されるスイス・フランの不胎化は行わないそうなので、対ユーロでのペッグが続けば、将来的に、通貨供給量の増加の影響によってインフレや資産バブルが発生することにもつながりかねない。
今のところ、スイスに追随するような動きは見られないが、他国への影響が懸念される。極端なケースとしては、資本規制などが導入される可能性も否定できない。小国であれば、世界全体への影響は大きくはないが・・・
ご参考→スイス・フランのユーロ連動と投機資金~ジョージ・ソロスにみるヘッジ・ファンド資金の変容
フォーブスが9月11日に発表した「アジアの優良上場企業50社」の中に、日本企業は1社も選ばれなかった。http://j.people.com.cn/94476/7594386.html
今年は、中国大陸部の企業が23社が選ばれ、韓国が8社、インドからは7社が選ばれた。
日本企業は、6年前には13社が選ばれたが、今年はゼロ。東日本大震災の影響だというのだが、昨年も任天堂と楽天の2社しか選ばれていない。
つい先日発表された、「世界経済フォーラム」の「国際競争力ランキング11~12年版」でも日本は3位順位を下げて9位であった。このようン間調査が行われると、ここ暫くの間、日本は順位を少しずつ下げてきている。企業規模などで、中国などに比べて、劣後するのは仕方ない面もないわけではないが、このような調査で、順位を下げてきているのは、企業の在り方そのものが問われているのではないか?http://mainichi.jp/select/world/news/20110908k0000m030046000c.html
世界で最低の政治に足を引っ張られていることは否定しないが、そうとばかりも言っていられない。
先日、長野を訪問しました。ローカル線の窓からはリンゴ畑が広がっているのが見え、早いものはすでに赤く色づいているものもありました。そのリンゴですが、海外に輸出をしようということで、多くの自治体や農家が、長きにわたって大変な努力をしてきました。特に、中国で富裕層が急増する中で日本の高品質のリンゴが高額でも売れるということで、その巨大な市場に向けて、様々な試みがなされてきました。ところが、原発事故以来、海外での売れ行きが大きく落ち込んでしまいました。http://www.asahi.com/national/update/0813/TKY201108130160.html今年の初物については全く売れなかったそうです。
(注)日本のリンゴで海外に輸出されているものは、ほとんどが青森産です。市場としては、現在、中国が注目されていますが、今まではほとんどが台湾・香港などでした。余談ですが、中国が日本の農産物の輸出市場として注目されて久しいのですが、現在輸出できるのは、リンゴとナシだけです。お米は、ご存知のように、枠などの問題があります。詳細はまた別の機会に。
農産物に限らず、海外からの観光客なども大きく落ち込んだままです。観光庁が「嵐」を使ってPRビデオを作成して流しているようですが、効果が上がっているかどうかはよくわかりません。(関連情報としては、次をご参照ください。→「「嵐のPRビデオ」は「日本のイメージをおとしめる」ためのもの?:外国人記者が痛烈なコメント」
農家の方々には大変お気の毒と言わざるを得ないのですが、海外から見ればある意味止むを得ない面もあります。その理由は、何が正しい情報かわからないからです。日本政府からは、「安全・安心」というコメントばかりですが、海外では、その逆に、日本政府に危険性を訴えてもっとしっかりとした対応を迫るようなものまである状況です。情報が錯綜する中で、日本は知っていても、福島と東京の位置関係も全くわからないような人たちにとってみれば、心配になるのはやむを得ないでしょう。
大丈夫だということを理解してもらおうとすれば、(本当はまず最初に日本国民にそれを示してもらいたいのですが)、日本政府が、一体何か本当なのかを知らせることで、情報をしっかりと開示することです。また、そうでなければ、政府に対する信頼感は醸成されません。国内でガイガーカウンターが飛ぶように売れて、品切れになっているなどという状況が起こること自体がおかしいと思われます。国内ですらそうなのですから、海外で不信感が高まるのは仕方ありません。
日本政府は、わけのわからないPRビデオを作るのではなく、また、ただ「安全・安心」と連呼するのではなく、しっかりと情報を開示することです。情報があれば、あとはそれに基づいて理解が進むはずです。
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ロンドンで行われた第4回英中経済対話で、王岐山副首相は、ロンドンが人民元のオフショア市場として発展させることを支持すると述べた。
中国は、米国からの対米為替レートの執拗な切り上げ要請に、抵抗してきているが、その一方で、将来に向けての人民元の国際化に向けての施策を着々と図っている。米国からの切り上げ要請に簡単に応じないのは、日本の失敗事例を反面教師としてしっかりと研究しているからで、切り上げ要請があれば、外貨準備による米国国債への投資を盾にして、それをかわして時間稼ぎを行っている。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54182&type=2
時間かせぎをしながら、人民元の国際化、流通範囲の拡大に関しては、きわめて戦略的に、かつ、積極的に動き出している。また、それを行わなければならない理由も存在する。それは、為替市場で介入を行っているが、市場からの流動性を吸収するすべが限られているために、その回避策が必要になっていることだ。
具体的には、人民元による貿易決済の拡大、元建ての国債発行、元建ての金融商品の発行解禁あるいは近隣諸国とのスワップ協定の締結などだ。
また、非公式ながら、中国の国境周辺では、人民元の取引が急拡大している。
長期戦略としては、国際決済通貨として認識されるために、SDRに人民元を加えるよう圧力をかけている。この関連では、ストロスカーンIMF専務理事が辞任した際には、当初の予想に反して、フランスのラガルド氏を支持して、その代わりに初めて朱氏が副専務理事に就任することを認めさせた。これを足掛かりに、専務理事の椅子も狙っているのではないか?
また、直近では、ナイジェリアが、外貨準備高のうち5~10%を人民元とする方針を明らかにしている。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54160&type=2
5月に発表された「世界銀行の展望―多極化:世界経済の新たな構造」と題する報告書では、中国経済の規模と、その企業・銀行の急速なグローバリゼーションにより、人民元の役割が更に重要になるとされ、「2025年の国際通貨体制として最もありうるシナリオは、ドル、ユーロ、人民元を中心としたものだろう」とされた。
それに対して、日本円の影は薄い。円の国際化が真剣に叫ばれたのは、1985年のプラザ合意の頃だろう。ということは既に25年以上たっていることになる。それ以降、様々な案が出されたが、当局がそれらに真剣に取り組んできたようには思えない。GDPで世界第3位ということだが、国際世界の中では、もう日本はほとんど忘れ去られようとしているのではないか?
今年6月に開かれたビルダーバーグ会議では、中国が初めて招待された。日本は、この会議には招待されたことがなく、欧米諸国以外から招待されたのは中国が初めてとなった。このビルダーバーグの例が示すように、欧米のエリートたちからすると、日本は主権国家として認められておらず、日本と話をする意味がないと思われているのではないでしょうか?
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ギリシャに始まった欧州の債務問題は、依然として解決の糸口が見つからない。ギリシャについては、IMFも含めた形で救済策が策定されたが、結果的に、90年代以降の債務危機問題の解決策として米国中心に推し進められてきた「ワシントン・コンセンサス」と同様の政策が導入された。90年代以降の債務問題で明らかになったのは、ワシントン・コンセンサスの手法は解決策とはならないということだったはずだ。しかも、ギリシャをはじめとするEU加盟の欧州諸国についてはかつてのような自国の通貨を持たない国々だ。
かつては、成長戦略として、自国通貨安をてこにした輸出増加が期待されたが、現在欧州で問題になっている国々では、それは期待できない。
今春、ギリシャ問題が持ち上がった時、IMFのトップはストロスカーンだった。しかし、彼は、ニューヨークのホテルの女性従業員に性的暴行を加えてとして、逮捕され、失脚してしまった。ストロスカーンは、2008年1月のダボス会議において、(世界金融危機を乗り越えるために)「財政出動すべきだ」と発言して、従前の米国主導の「ワシントン・コンセンサス」とは異なる動きを見せ始めていました。当時、IMFは「It’s mostly fiscal.」(常に緊縮財政)というように言われるまでになっていました。そのIMFのトップであるストロスカーン氏から「財政出動」という言葉が出たわけですから、世界中が驚きました。しかし、ストロスカーンは失脚し(その後、彼の逮捕は冤罪であった可能性が高まっています)、ギリシャへの救済策はかつてのワシントン・コンセンサスと同様のものとなってしまいました。
本日(9日)から、G7がフランス・マルセイユで始まりますが、欧州債務問題には、どのような提案がなされるか注目です。しかし、残念ながら円高問題は真剣に議論されることはないでしょう。
スイス国立銀行は、スイス・フランの上昇を抑えるために、1ユーロ=1.2スイス・フランを上限として、ユーロに連動させることを発表した。この上限に抑えるために、必要があれば、無制限にスイス・フランを売って介入を行うものだ。もし、これがうまくゆかなければ、巨額の損失を被る可能性がある政策だ。実際、スイスは昨年前半にもスイス・フラン売り/ユーロ買いの介入を実施して、それがうまくゆかずに260億スイス・フラン(約2兆4000億円)の損失を出している。
また、同様に為替介入がうまくゆかなかった例としては、1992年に、ジョージ・ソロスが英ポンドを売り浴びせ、英国は介入でポンドを買い向かったが、失敗して、当時(ユーロ導入前)行われていたERMから、英国が離脱するということも起こっている。日本においても、円高を阻止するために円売り/ドル買い介入を行って生きているが、現在、それを行う外為特会では40兆円という1年の税収とほぼ同じだけの評価損益を抱えるという厳しい状況となっている。
スイス・フランの行方はしっかりと見守っていきたい。
そこで、注目されるのは、ヘッジ・ファンドなどの巨額資金の動向だ。先に触れたように、過去には、ジョージ・ソロスのように、英国やタイなどの中央銀行を打ち負かして、巨額の利益を上げた例もある。しかし、最近は、ヘッジ・ファンドなどの資金の動向が以前のように大きく注目されるような動きをしていない。リーマン・ショック以降ヘッジ・ファンドの残高は一時的に減少したが、最近はまた以前の水準を上回るような状況に戻ってきているというのにだ・・・
この理由としては、いくつか考えられる。例えば、ジョージ・ソロスが外部資金を返却してしまった理由と言われるドット・フランク法による規制強化の問題だ。
また、ヘッジ・ファンドなどの資金の投資家の内容が大きく変化したことによる運用の変化だ。ヘッジ・ファンドの投資家は、以前は、個人の富裕層が中心だったが、その後は年金などの機関投資家の資金が大きく流入している。個人の投資家の場合は、収益が上がれば運用内容などにはほとんど口を挟まなかったが、機関投資家の場合は、受託者責任の観点から運用内容の詳細な開示を求める。また、収益のダウンサイドのリスクに敏感な事から、リスクの分散を求める傾向が強い。
そのため、運用手法、運用戦略、投資対象等々の分散が必要になってしまう。かつてジョージ・ソロスが行ったような巨額の資金を集中的に投資するようなことは行われなくなっている。
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、政府系住宅金融機関であるファニー・メイとフレディー・マックの監督機関である連邦住宅金融庁(FHFA)が、大手金融機関17行を提訴したとしている。訴えた理由は、サブプライム・ローンのリスクを正しく開示しないまま、ファニー・メイとフレディー・マックに販売した、というものだ。賠償請求額は合計で1960億ドル(約15兆円)だ。
訴えられた大手金融機関側は、訴えられた方は、ファニー・メイとフレディー・マックは、住宅ローンの専門金融機関であり、リスクについては理解していたはず、といっている。
http://online.wsj.com/article/SB10001424053111903648204576553011839747054.html?mod=WSJ_WSJ_US_News_5
しかし、ここで問題なのは、“言った言わないの問題”ではなく、そもそもファニー・メイとフレディー・マックに販売されたサブプライム・ローンが、本来貸してはいけない人たち(返済能力ない人)に対して行われたものであったということだ。サブプライム・ローン問題では、とかく、「証券化」が問題とされ、投資銀行の責任が問題となってきたが、証券化はあくまでも単なる「器」に過ぎず、中に入っているものが腐っていたらどうしようもない(これは単純化しているので、投資銀行に責任がないと言っているわけではない)。80年代後半の日本のバブル形成もそうだったが、銀行がマッチポンプのようにバブル形成に深くかかわっていたことは否定できない。米国のサブプライム・ローン問題も、そもそもの原因は銀行の「貸し手責任」にある。
2007年の問題発生以降、「Too big to fail」(大きすぎてつぶせない)ということで、大手金融機関には多額の税金が投入された。ここにきて、米国の政府機関が、資金を投入して救済したはずの大手金融機関を提訴するのはおかしい、という議論もあるようだ。しかし、本来、問題発生の原因となった金融機関の責任はもっと追及されるべきだったし、これからでも遅くはない。救済されてからまだそれほど立っていないのに、経営者や従業員の報酬は他の業界と比べれば依然として相当高い。「人のふんどしで相撲を取る」ことで、天文学的な報酬を受け取っていたのに、失敗して損失をだすと、そのつけはすべて国民に押し付けて、なおかつ依然として高い報酬を得ているというのはどういうことだろうか?
ちなみに、最近、米国や日本の国債の格付けを引き下げたことで話題となった格付け機関であるが、サブプライム・ローンの証券化でも、内容をほとんどチェックすることなく、かなり高い報酬を得ていたことが以前より問題として指摘されている。しかし、格付け機関の責任や、その在り方についての議論は確かにあるが、議論はなかなか進んでいない。
ここ暫くの急激な円高で、国内の空洞化が一段とクローズアップされていますが、国内企業による生産拠点の海外移転は、90年代からの大きな長期的な流れで、今に始まったことではありません。
当初は中国が移転先として選好されましたが、日中間の政治情勢などによって、度々、勢いが鈍ることはありました。しかし、トレンドは全く変わっていません。最近は、中国国内の人件費の高騰などで、タイ、ベトナムさらにはバングラデシュなどにも進出するようになっています。
日本国内では、高齢化や人口減少などによって、市場としての成長性は期待できないなかで、新興国が新たな「市場」として期待は大きく膨らんでおり、また、そこには安い労働力が存在するのですから、需要のあるところに生産拠点を移していくことは、企業としては当たり前の行動ということなりますし、そのような行動をとってきています。国内の産業空洞化は何も今に始まったことではないのです。
しかし、大企業は、海外に進出していけばよいでしょうが、大企業の下請け(あるいは孫請け)として仕事をしてきた中小企業はなかなかそうはいきません。中小企業でも、90年代以降、大手企業が海外に進出する中で、生産拠点を移したり、あるいは協力工場を持ったりということで、中小企業も様々な取り組みをしてきたのも事実ですが、(ここでは詳述しませんが)様々な問題があって、必ずしも成功したとは言い難い状況です。どちらかと言えば、ほとんどの企業が何らかの形でうまくゆかなかったという経験を持っているはずです。
ここにきて、受注がさらに減少し、利益率も低下し、後継者もいなくなり、経営が厳しくなり、倒産ではなくとも、その前に廃業する会社が増加しています。国内の製造業を底辺で支えてきた企業群が減少することで、ますます空洞化が加速するという悪循環も懸念されます。最近の新聞には、企業誘致を行うために、新たに補助金を出すというようなことも出ていましたが、今までも同様のことをずいぶん行ってきましたが、ほとんど効果はありませんでした。日本企業は6重苦を抱えているとも言われ、もはや国内企業の海外移転を止める手立てはないでしょう。
これからやらなければならないことは、国内に新たな仕事を作り出すことです。新たな成長が見込まれる産業を作り出すことは言うまでもありませんが、製造業においても、製造工程が海外に移転したとしても、新しい技術や新しい製品をを作り出すという部隊、あるいは製造するための製造工程を担う部隊などは必要ですし、これらこそが、古くから言われていた日本に求められてきたことでしょう。
国内市場では、全体のパイが大きくはなりませんので、競争がますます熾烈になってきています。ここで生き残るためには、釈迦に説法になってしまいますが、それぞれの強みを生かしていかなければなりません。製造業であれば、本当に国内でしかできないものを除いては、海外をうまく使って、例えば、協力工場を使ったりOEMを行うということも必要でしょうし、自社の商品ラインの中に、海外企業の製品を厳選しながら入れてゆくということもあり得るかもしれません。奇しくも、国内企業の海外移転を促していたのは進行する円高ですが、この円高をうまく使えば、部材などの調達原価を引き下げることが可能になります。中小企業の場合には、いきなり海外に出て行って、自前で工場を持ったり、あるいは海外で販売を行ったりというのは、リスクが大きくそう簡単な事ではないでしょう。しかし、部材や一部の製品を海外で調達することから始め、海外とのつながりも持っていくことで、また新たな展開が開けるのではないでしょうか?このまま何もしないでいることでは、企業の存続さえ望めません。
弊社では、中小企業さんの為に、部材の海外からの調達、OEMの紹介など様々なサービスをご提供しています。自社ではなかなか海外ビジネスのリスクはとりかねるということもあるでしょう。そのような会社さん向けに弊社が間に入ることで、海外を利用するメリットをご教授いただけたらと思います。ご興味ある方は以下ご覧頂けたらと思います。→K2Oの「ものづくり支援(コンサルティング)」
先日、安住氏が財務大臣に決定というニュースが流れた際に、東証では株価が下げた、と話題になった。
その安住大臣がTVの報道ステーションに生出演とあって、どのような話をするのか興味があった。
しかし、特別会計の説明など、あまりにひどすぎる。何もわかっていない人がわかったようなふりをして発言しないほうが良い。
ぼろを出さないようにテレビに出さないほうが良かったのではないか?なぜ誰も止めなかったのだろう。
これでは官僚の言いなりになってしまうのもやむを得ないか・・・
G7にも参加するそうだが、会議の内容を理解できるのだろうか?
ただ、要は「増税します」ということをTVで発言したかっただけのようだ。野田総理は、経済成長と財政健全化を両立させるというのだが、経済成長の政策などついぞ聞いたことがない。
そのような中で、突然、増税、増税のオンパレードになってしまった。復興に向けての財源はしょうがないが、いつどこでどれだけのお金が何故必要なのかといった当たり前のことが全く議論されなくなってしまった。自民党でもっもう少しかっこはつけたものだが、今は全くそれもなくなってしまった。
明日、また株価が下がらなければよいが・・・
郵政改革法案に反対する理由は、米国に日本の富を奪われないため、などとよく言われる。本当だろうか?改革法案が通ると200兆円が米国に持って行かれるといった議論が良く行われている。
しかし、現在、この郵政改革法案がたなざらしにされていることで、一番、利益を享受しているのは米国企業だ。具体的には、がん保険を取り扱う「アフラック」があげられる。かつては、郵政民営化に反対していたのは、日本の銀行と保険会社だった。郵貯と簡保に顧客を奪われるのが怖かったからだ。今も、日本の銀行と保険会社のスタンスは基本的には変わらないが、銀行では一部の地方銀行などの中で、郵貯と提携することで自行の事業を拡大しようという動きも出てきている。保険会社の中でも、例えば、再大手の日本生命が簡保と提携して新商品を出そうとしている。しかし、この動きは、改革法案がたなざらしとなる中で、全く動いていない。簡保にしても日本生命にしても、みずみず新規の事業機会を失っていることになる。
かつてアフラックは在日米国商工会議所(ACCJ)の会頭を務めたこともあり、積極的に自らの日本における事業を守るために活動してきている。現在でも、もし簡保と日本生命の提携が動き出せば、同社の事業は(程度はわからないが)影響を受けることになる。外資から日本国民の資金を守ると言っているのだが、逆に外資企業を守っているという、何とも皮肉な結果になっている。
ちなみに、郵貯や簡保の資金がどのように運用されているかだが、非常に簡単に言ってしまうと負債と資産の特性を考慮して運用先への配分比率が決定される。国内外の資産運用会社にしてみるともっとリスクをとる運用を行い、その資金を受託したいという思いが強いだろうが、全体の規模からすれば、まだまだ限定的のようだ。資金の性格からすれば、株式、海外投資などはALM上ではリスクが高く、配分比率はどうしても小さくなってしまう。米国債を200兆円購入することなどはALMの計算上は絶対に出てこない数字だ。現在はまだ政府の持ち株が多いが、政府が何らかの政治的判断をして、郵貯や簡保に米国債を無理やり買わせるようなことがありうるのだろうか?このような話が流される背景にある意図を理解できていないのではないだろうか?
9月1日の朝日新聞に「ドル安は良いことだ」というフレッド・バーグステン氏のインタビュー記事が掲載されていた。
書店に行けば「ドル基軸通貨体制崩壊」といったタイトルがたくさん並んでおり、「ざまみろ、いい気味だ」といったようなニュアンスを言外に感じることが多いが、しかし、現実は全く逆で、米国の本音はやはり「ドル安政策」です。しかし、米国の政府要人からは「ドル安」発言が出てくることは通常ありません。これは、急激なドル安が進んで、米国への資金流入が止まると困るからで、本音ではありません。
1971年のニクソン・ショック以来、50%を超える円高局面は、70年代、80年代、90年代と3回あった。為替が高くなったのは、日本だけでなくドイツも同様だで、ドイツも日本と同じように、米国に対して国際収支が大きく黒字になっていた。為替が米ドルに対して大きく上昇することで、国際収支がどのように変化したかといえば、米国の期待に反して、国際収支のポジションはほとんど変化がなかった。つまり、為替の調整では国際収支の調整は出来ないということを、私たちは学んだはずでした。
しかし、バーグステン氏は、このところ、米国が基軸通貨国として責任を負うのは荷が重いとして、ドル安への裕度委へ口先介入を図っている。かつての日本とドイツに対するのと同じように、ここ数年は中国に対しても、元を大きく切り上げるべきだと発言を行っています。
しかし、中国は日本の経験を非常によく研究しており、それを反面教師として、日本と同じような政策はとらないだろう。為替についても、方向としては、元を切り上げてゆくだろうが、非常に慎重に、ゆっくりと対応しており、その国際化についても戦略的に対応している。日本は口では国際化ということを言っていたが、積極的にそして戦略的に取り組もうとは決してしなかった。つまり、常に米国の陰に隠れていたし、その前を歩こうとはしなかった。ドル・ユーロ・円の3極体制ということも言われたが、ある意味ジョークで終わってしまった。バーグステン氏は、将来の通貨体制の姿として、ドル・ユーロ・元の3極体制あるいはドル・元の2極体制ということを言っています。
さて、米国ですが、問題は国際収支の赤字なのですが、為替では改善できないのは明らかで、米国はそれを無視して、改善しようともしてきませんでした。これを改善するには、「借金して良い暮らしをする」というような生活そのものを変えていかなければならないでしょう。リーマン・ショック以降、“マイナス”とも言われた貯蓄率が大きく改善していますが、最近は、このところ減少していたクレジット・カードの与信が増加する兆しが見えるなど、米国人がその生活様式を変えるのはかなり大変なようです。そうすると、しばらくは円高が続き、また米国のファイナンスに日本が協力しなけえればならないということになってしまいます。つまり、「お金を貸した方が悪い」という状態が今後も続くということのようです。
このところ中国の味千ラーメンが「骨湯門」で何かと話題です。「門」はスキャンダルのことで、豚骨スープにまつわるスキャンダルで騒ぎになっています。
もとはと言えば、そのスープが店舗で仕込んでいるとされていたものが「濃縮還元スープ」であることが判明し、なおかつ「1杯に肉の10倍、牛乳の4倍となる1600ミリグラムのカルシウムが含まれている、」と宣伝していたが、実際はその3%程度しか含まれていないということが判明し、大きな問題になったためだ。
そのため、店舗を運営している味千中国ホールディングスの株価は一時は高値から40%くらい下落した。そのため失われた時価総額は一時は700億円以上にも達した。
また、当局が「虚偽宣伝」の疑いで調査を始めたとも言われている。本件については、当初の味千中国の対応のまずさがリスク管理の観点から指摘されるが、今日ここで述べたいことは、その事ではありません。
味千は、既にご存知のことと思いますが、熊本県に本社のあるラーメン店チェーンで、日本国内では100店舗あまりですが、東南アジアなど海外に積極進出して、中国では500店舗以上を運営しており、中国・香港の店舗運営会社は香港に上場しています。「ガイアの夜明け」などテレビ番組でも成功例として紹介されることが多いので、ご覧になった方も多いと思います。
味千(中国)(正式名称は「味千(中国)控股有限公司」)の業績は、予想ベースで売上が3181.5百万HK$(約320億円)、利益(税前)が716百万HK$(約72億円)です、(注)今回のスキャンダルで下方修正される可能性が高いと思われます。
実は、この味千(中国)は日本の味千とは資本関係はほとんどありません。味千を運営している重光産業と重光社長の持ち分を含めても5%には達していないそうです。
現在のCEOである潘慰氏が味千の味に惚れ込んで、香港を手始めに中国展開を始めて成功したということで、日本側が積極的に展開したわけではありません。
味千(中国)は日本とライセンス契約を行って、ライセンス料や技術指導料を支払っています。その金額は年間1.5億円程度のようです。
重光産業は売り上げが16億6000万円(21年6月)ですので、このライセンス料の影響は決して小さくありません。現在受け取っているライセンス料が大きいのか?小さいのか?その評価は分かれています。
重光社長は、中国で事業を行うことのリスクと、中国側の経営者がやりがいのあるやり方を考えて、現在のようなやり方にした、と言っています。ある意味、中国で事業を行うことのむずかしさをよく理解されているが故の判断だったのかもしれません。重光産業の場合は、自らが積極的に事業展開を行ったというよりも、結果的に、中国事業にかかわることになったという印象ですが、中国で事業を行う場合には、何をどのようにというビジネス・モデルの問題はもちろん重要ですが、事業を行うにあたってのリスクは様々です。
日本では国内市場が縮小しておりますので、何らかの形で海外の成長を取り入れてゆくことを考えていかないと、会社は持ちません。その場合に、どのように海外とかかわってゆくのか?真剣に考えていかなければなりません。
尚、味千(中国)ですが、最近は、少しずつ客足も戻ってきているようです。味千(中国)からの正式な謝罪が遅れたことが今回の大きな騒ぎにつながったのですが、ファーストフードのお店であるので、濃縮スープは品質・安全のベースになるものという評価の声も聞かれるようになっています。
民主党の新代表が選出され、事実上、新しい総理大臣が決まりました。たまたまテレビで代表選の模様を見てしまったのですが、その候補者の演説などを聞いていて、何か現実とは遊離した別世界の話を聞いているようでした。代表に選ばれた野田さんの口からは「国民のため」という言葉が聞かれましたが、その言葉が国民に向けられているようには思えませんでした。
民主党政権が誕生してから3人目の総理大臣の誕生となりましたが、「国民の審判」を得ることなく、またそのポジションがたらい回しのされることになりました。更に、非常に残念なことは、当初国民に約束された事柄が全く守られず(というよりもそれを守ろうという姿勢さえ見えませんでした)、正反対の「増税路線」「官僚依存」の政治が行われるということになってしまったことです。(増税に全く反対というわけではないのですが…多くの国民がそうだと思いますが)
菅前首相が自画自賛した「社会保障と税の一体改革」などはその好例です。野田総理大臣の誕生で、この一体改革が進められることになるのでしょうが、ここでは国民への説明がほとんどなされずに(メディアでもほとんど具体的なことは報道されませんでした)、「所費税増税の道筋」が決められてしまいました。ここで行われたのは、国民に「金額の書かれていない請求書が送りつけられた」ようなもので、いくら引き落とされるかは国民に知らされていない、というものです。更に悪いことには、請求書の明細が何も書かれておらず、何に使われるのかはわからないし、それによってどうなるかもわからない、と言ってもよいようなものです。
ここでは、この「社会保障と税の一体改革」に若干コメントさせていただきます。
「税」の改革というのであれば、消費税だけでなく、所得税、法人税なども含めた全体の議論があってしかるべきです。また、財政赤字を補てんするためだけでなく、長期的な観点から将来の税収を増やすための税制改革もあってしかるべきです。
ただ増税するというだけで、何故必要なのか、いつ・どこに・どれだけ必要なのかといった議論が全くありません。
社会保障関連予算は、既に一般歳出の50%を占めるまでになっています。財源をねん出するためには、もはや増税ばかりでなく、如何に歳出を切り詰めるかも徹底的に議論しなければならないでしょう。
つい最近のことですが、米国では国債発行枠の引き上げ問題が進展せずに、デフォルトを引き起こすのではないかと心配されました。この議論でも、歳入をいかに増やすのか(富裕層に対する増税議論が中心でしたが)と、歳出をいかに削減するかが、議論されました。二者択一ではありませんでした。
尚、「年金」に関する議論ですが、今回の改正案で、基礎年金の財源が、事実上、すべて税となりそうです。以前は、基礎年金の保険料での負担を1/3から1/2に引き上げる際にもずいぶん問題になりましたが、今回は事実上、それが全額「税」という形になりそうです。
東日本大震災や福島第一原発事故などで、この問題がかすんでしまった感はありますが、このように重要な問題についての情報がしっかりと国民に伝えられないことは非常に残念に思います。結局は、財務省の思惑通りにすべてが進んでしまっているように思われます。